その他

□アドリビトムは今日も平和
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※ディセンダーは少年。名前は飛燕(ひえん)。
穏やかな性格で、人の感情を知覚することができますが、本人に自覚はなく周囲もそれを知りません。



1「謝るならはじめからやるな」
ユーリ&ルーク

「あ、ユーリ! ガイの奴見なかったか?」
「あー、あの…(フレンに似た顔の)お目付け役のにいさんか。さあね見てねぇよ」
「(むっ)ガイはお目付け役なんかじゃねぇっつーの」
「おいおい、何ムキになってんだ」
「…、…、……ごめん、ついさっき、ガイと喧嘩したんだ」
「はあ、喧嘩…ね」
「何だよ」
「いや。何でまた喧嘩なんかやっちまったんだ?」
「いや、天気がよかったから…」
「?」
「甲板にいたら、空とか海とかが超キレイで、太陽がきらきらしてて」
「…」
「ガイが俺に声かけてきたから、振り返ってガイの事見たら、なんかああ、すげえガイの事好きだーって思ったから」
「……」
「思わず抱きついて、キスとか、しちまって…。アッシュとかカノンノとかいる前だったから、ガイ怒って、どっか行っちまった」
「……あのな」
「悪かったと思ってるよ! だから謝ろうと思って、探してるんだ」
「謝るんならはじめからやるんじゃねぇよ」
「だってそうしたいって思っちまったから…」
「分からなくもないけどな。ま、見かけたらあんたが探してるって伝えといてやるよ」
「あ、ありがとう! ユーリ」

「…」

「なあ」
「ん」
「ユーリ、俺の言う事分かるの」
「は?」
「俺がガイにキスしたいって思った気持ちだよ。他の奴らに説明しても、空とか太陽とか訳分かんねーって言われるのにさ」
「!……」
「? 何でびっくりした顔するんだよ?」
「っ…つーかあんた、そうやって色んな奴にその話したら、余計あのにいさんを怒らせる事になるんじゃないか?」
「! えっ!? あ……や、やっぱガイには何も言わなくていい! 俺は何も、言ってない事にしてくれ!」
「へーへー」



「……キスしたい気持ち、ね…」

青と、光の世界から、そのまま現れたような眩しい彼。
それはまるでこの綺麗な世界そのものようで。

(理由もなくいとしい、どうしようもなく、いとおしいと思う)

「…俺は何共感してるんだ…」

(フレン。あいつからの手紙にもたまには返事ぐらいしてやるか?)



2「手加減してよ」
カイル&セネル

「セネルさんっ! オレに泳ぎを教えてください!」
「何だ突然」
「チュロス海底遺跡に泳いで行きたいんです!」
「・・・何だって?」
「父さ…スタンさんは、遺跡に行くまでの間ずっと息を止めてたって聞いたんです! だったらオレは、泳いでそこまで行ってやるって思って! オレはと…スタンさんを超える英雄になりたいから!」
「…世界一アホになりたいって聞こえるな、それは」
「セネルさんはマリントルーパーなんでしょう!? だったら、泳ぎもとっても上手ですよね! オレも泳ぎにはちょっと自信があるけど、やっぱりプロに見てもらうのが一番いいと思って!」
「(このテンション…デジャブが…)」
「セネルさん! オレ甲板で待ってますから、きっと来て下さいね!」
「(モーゼスみたいな奴だな……)」

「ひとまずこいつから始めてみろ」
「ええっ、体にこんな錘をつけたら沈んじゃいますよ!」
「こんなもの初歩の初歩の訓練だ。俺だってつけている」
「ハッ、そうか、そういう訓練なんですね! ようし、オレどこまで潜れるかやってみます!」
がぼっ



がぼがぼっ
ざばっ
「ぷはっ! ちょ、ちょっと、ちょっと待って…」
「どうした」
「こ、これ本当に訓練なんですか? 確かに深く潜れますけど、上に上がるのがめちゃめちゃ大変なんですけどっ!」
「もちろん訓練に決まっている。マリントルーパーの資格を取る為にこなさなきゃいけないカリキュラムのひとつだ」
「そ、そうなのか…! よし、負けるもんか! じゃあオレ、もう一度やってきます!」
がぼっ



がぼがぼ
がぼ…

「ちょ…手加減してやれよ…」
「ガイ…さっきあんたのご主人様が探してたぞ」
「あ…そう、かい」
「いろいろ大変だなあんたも。…さて、引き上げてやってくるか」
「…、え、ちょ、ルークから何て聞いたんだちょっセネル!」
どぱーんっ



3「心配かけやがって…」
リッド&ガイ

「鳳凰天翔駆!」
「気合入ってるなぁ」
「いや…もう何と言うか…」
「? ガイが魔物退治頑張ってくれるんならオレは楽でいいんだけどな」
「ああ…君が依頼のパートナーを探してたおかげで丁度よく船から出られて、俺もありがたいよ」
「何だぁ? 何かあったのか?」
「何でもない! さ、次に行こう」
「…」

(なんとなくこいつファラと似たよーな匂いがするんだよなー…)

「弧月閃!」
「猛虎連撃破!」
「君も充分気合が入ってるじゃないか」
「オレは、もっと肩の力を抜いて自分のやる事だけをやりたいんだけどな」
「?」
「(こーゆー奴には怪我させらんねぇよなぁ。あーあ。どいつもこいつも心配かけやがって)」



4「一つだけワガママ言わせて」
カイウス&ジェイド

「以前、グランマニエ皇国はリカンツの獣人化の力を戦力にする為に一戸小隊を作ろうとした事がありました。もちろん極秘で」
「…………」
「ですがその作戦はリカンツに力を持たれる事を恐れた者達によって否決されました。捕らえていたリカンツはすべて」
「…………」
「…抹殺したという記録が残っています」
「…………」
「私が憎いですか」
「…べつに…大佐が軍に入るより、ずっと昔の話なんだろ」
「そうですね」
「それを…そんな事を許可した前皇帝も死んで、今は新しい皇帝が軍を取り締まってる。…そうだよな?」
「ええ。現皇帝、私の仕える皇帝陛下は、リカンツを卑下したりしませんよ。リカンツを捕らえても殺してはいけない、そう御触を出しています」
「………それが殺された仲間達に償ってる事になるとは思わないけど…でも、そうやって皆に呼びかけてくれるのは、嬉しい。大佐、グランマニエはオレ達が住みやすい国になるかな?」
「人の心に根付いた差別意識は容易に覆ったりはしません」
「!」
「人々はリカンツという種族に対して差別意識だけではなく、その異形の力に対する恐怖も抱いている。グランマニエのみならず、大陸全土で未だリカンツ根絶運動は活発です」
「………………」
「…」
「…………」
「…………身の安全の為にも、貴方はこの船にいた方が賢明でしょう。ここには貴方を差別する人間がいませんからね」
「………え?」
「…、奇特な方々ばかりなようですしね、ここは」
「………」
「さあ、私にはこれ以上話す事はありません。貴方も自分の持ち場に戻りなさい」
「…」

「なあ大佐、大佐はリカンツを殺すなっていう御触に賛成したのか?」
「撲滅運動が浅ましいとは思っていますよ」
「……大佐に一つだけ、ワガママを言ってもいいかな」
「何ですか」
「皇帝陛下に伝えて欲しいんだ。オレ達の本当の名前」
「?」

「オレ達の本当の名は、レイモーン。侵略者なんかにこの名を知ってほしいなんて今更思ってなかったけど、なんだか大佐達なら…いいようにしてくれるような気がした」
「…」
「リカンツは皆が勝手にオレ達をそう呼んでるだけだ。オレ達はレイモーンの民だ。オレだって、今はできないけど、いつかお互い共存を臨める日が来る事を祈って」
「ええ。レイモーンの民……カイウス・クォールズ。貴方の祈りは必ず我が皇帝陛下に申し伝えましょう」
「ありがとう、大佐」


5「絶対すぐ返すから!」
マオ&ディセンダー

「あ〜! 飛燕! ちょっと待って!」
「?」
「飛燕って、パニールからお菓子のレシピいっぱいもらってるんだよネ? その中にピーチパイのレシピってなかった?」
「……なかったと思う」
「そっかぁ…飛燕ならもしかしたらと思ったんだけどネ」
「何かあったの?」
「実はネ、最近ギルドに依頼が立て込んじゃってて、皆疲れてるでしょ? だから、皆にナイショでピーチパイを作ってあげようと思ってサ! この船、やたら甘いもの好きさんが多いからネ♪」
「ピーチパイなら、クレアに聞いたらいいんじゃないかな」
「それが、今クレアはヴェイグとお話し中なんだヨ。折角ならヴェイグにもナイショにして驚かせたいし、もうすぐ依頼に出てる皆が帰ってきちゃうしで、ボクも焦っちゃって」
「そっか。マオは優しいね」
「へへ、ま、それほどでもあるヨ!………でも飛燕、この間ピーチパイ焼いてなかった?」
「…」
「…?」
「…………あ。僕、クレアからピーチパイのレシピもらってた」
「あーやっぱり! ボク見たと思ったんだ!」
「ごめん。はい」
「ううん、ありがとう飛燕。絶対すぐ返すからネ!」
「マオ。僕も手伝うよ」
「でも飛燕はこの船で一番働いてると思うけど?」
「今日は僕、外に出る用事がないから」
「いいの?」
「うん。人数分焼くのは大変でしょ?」
「ありがとう! ボク、ピーチパイ作るのは初めてだから、手伝ってくれる人がいて助かるヨ!」

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