読み物
□不器用な
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「…―目、万丈目!なぁっ、大丈夫か!?」
「…、なん、だ、騒々しい…」
霧がかかったような意識の中、聞き慣れてしまった声に重い瞼を開けるとそこには、焦ったような、不安そうな…いや、今にも泣き出しそうな、そんな十代の顔があった。
「!!万丈目!」
十代?
「…何故、お前がここにいる…授業はサボるな」
いつものように答えてやると、十代は一瞬面食らったような顔をし、そしてすぐ笑顔になった。
「連絡も無いのに授業にいなかったから、心配して様子見に来たんだ。
お前のせいだっての」
「…俺を口実にしたのか…」
「なっ、人聞きの悪い、ホントに心配してるんだぜ!」
怒ったような言い方だったが、十代はどこか嬉しそうだった。
「(そもそもこうなった原因はお前のせいだ…)」
と言ってやりたかったが、言葉には出来なかった。何故、と問われるのが怖かった。
自分でも分からなかったから。
「熱は…うわっ、アツっ!間違いなくあるな。
…しっかし、万丈目がホントに看病される身になるなんてなー」
十代に触れられて初めて額が熱いと知る。
それは身体の防衛反応のためなのか、それとも。
「…看、病?」
「風邪引いてんなら休めって言ったけどさ、連絡ぐらいくれよな。…その、看病ぐらい頼まれてやるからさ。」
「…」
そういえばそんな事を言ったか。
朦朧とした意識の中、記憶をかき集める。
確かに、万丈目自身もまさか本当に身体がこんな状態になるとは思わなくて。
弱い自分を見られるのが恥ずかしくて。
でも。
「…お前が頼まれてやるんじゃない、俺が頼んでやるんだ。」
「おう、任せろ!」
ただ妙に嬉しそうに張り切っている十代を見て、拒絶するのは躊躇われた。
深く考えるのも疲れてしまっていた。
十代が―…理由はどうであれ、そこに居る事が心地よかった。
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