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□ウェイクアップ・ステップ
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チチチ、と鳥の声が風に揺られながら奏でられ、朝の光が所々から差し込むレッド寮に二つ、黄色い影。


ズドォォォォンン

「十代!朝だぞ、いい加減に起きたらどうだ!」



十代起床部隊 隊長・三沢大地。




ウェイクアップ・ステップ




「…起きないっスね」

やや呆れた顔で言うのは十代起床部隊 隊員・丸藤翔。

「そろそろリボルバードラゴンに慣れてきたか…次のモンスターを考えないとな…
 それよりどうして十代はこんなにもよく眠れるんだか。夜更かしか?」
「アニキは晩にどんなに早く寝てもちゃんと授業は寝るもんね。
 とにかくアニキ起きなよ!もう朝だよ!」

「…うー、んむにゃむにゃ…もう食べれない…」
「どんだけベタな寝言っスか!ほらほらアニキ!」
「…………ZZZ」
「…起きないな」
「どうしよう?」

「…」

「にしてもいい寝顔だな、見てるこっちが気持ち良くなるぐらい」
「…寝る子は育つって言うしね。…でもこれ以上アニキに成長されたら身長的に追いつけないっス!アーニーキー!!」
「放ってはおけないしな…よし、今から俺は十代を起こすための方程式を考える」
「え、あー!ちょっと!もう壁に数式書いてる!せめて最初は紙に書く努力をしなよ!―…、もう!
 じゃあ僕も何か考えないとな…と言ってもやれる事は大体やったしなぁ。揺すったりつねったりじゃびくともしないんだから…」
「…ここに十代のAを代入してブツブツ…」
「あぁ、もうダメだ、自分の世界入ってる。既に壁が一面黒くなってる。
 …どうしようかな、流石に水をかけるのは気が引けるし、余りにも痛みが伴うのは可哀相だし…」
「よし!分かったぞ!」
「早!いやいいんだけどね!で、どうやってアニキを起こすの?」
「よし、そこで見ていてくれ。…まず直径80cmぐらいの何の変哲もない輪っかを用意する」
「うんうん」
「そして今から寝ている十代に魔法をかけます」
「うんう…ん!?」
「はい…ワッツッスリー!!!」
「言うの早っ!」

「さあいくぞ…奇跡の瞬間・三沢マジック!!」



ふわっ



「あ、ああーー!アニキが…アニキが浮いたーーー!」
「ほうらこの通り、輪っかには何も当たらない、イッツ三沢マジック」
「凄い!…けどどうでもいいよ!
さっきの方程式はそんな事計算してたの!?」
「マジックもできるデュエリストってどうだろうか」
「多分もういるよ。そんな事より早く兄貴を起こさないと…僕達まで遅刻しちゃうっス!」
「そうだな、じゃあそろそろ準備してやるか」
「そうっスね」




そう言って十代を着替えさせる十代起床部隊の勝率は今だ3割弱である。






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