オリジナル

□第一章後編ロスト
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井川がトイレに入ってから30分が経過した


「井川さん…大丈夫?」

「…………うん」


呼吸を調えてゆっくりドアを開けた。


「トイレ長いっすね」


「お前そのセリフ女子に対してだったらアウトだぞ」


カウンターの前掛けを持ち家に槇原を入れて茶の間へ通す


「槇原のせいで30分死んでた」


「俺なんかしました?」

「あー…したした」


普段読みもしない新聞を開き顔を隠す。


「俺井川さん好きだよ」


「恥ずかしいわ」


「素直に俺もって言わないんだ?」


もはや遊ばれてるのか本気なのかわからない。
井川にとって槇原への好意は友情か愛情の天秤が揺らいでる最中。


「槇原の好きって友情的な好きだろ?」


「そんなに信じられないんだ?」

見つめられて顔を合わせる事が出来ない。

「まだ俺の気持ちの整理がつかねぇの!」


「今どうとかじゃなくていい、なんなら違うかたちで答えを聞きたい」


「違うかたちって…?」


槇原は鞄からノートを取り出して井川に渡した。

「今度の新曲、井川さんが作詞して」


「へ?」


まだ既存の曲を歌う事しかしていない井川にとっては難題
ましてや槇原に対する答えを表現するのは難しい。


「今回は詞から曲をつけるから、井川さんが思うように書いて欲しい」


「そんな…急に…」


「井川さんなら出きるよ」


渋々ノートを受け取りしばらく黙り込む井川。


「思った気持ちを単語で書いてくだけでも何とかなる、歌は自由だから」

バンドに対しても槇原に対しても初めて向ける自分の思い。


この日から井川の妄想劇が始まった。
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