パラレル部屋

□夢みるアンドロイド
1ページ/32ページ

「ったく・・・セクサロイドの癖に主人を選り好みするなんて・・・・信じられない!!
何よ!!人を馬鹿にしたように見下すようなこんなセクサロイド・・・・聞いたこともないわ!!
いくら見た目に惹かれたとはいえ・・・・欠陥もはなはだしいとはこのことだわ!!」


彼に対し何度こんな言葉を吐きかけられただろう・・・




「人好みをする姿かたちのうえ・・・性格もさほど悪くなく性質も温厚・・・・はずなのに
どうしてすぐに返品されてくるんでしょうかね?この『コンラート』は・・・・」

「感情が乏しいのです。その上表情も芳しくない。
これではいくら人好みをするような顔立ちでも嫌気がさすというものでしょう」

目の前の円柱形の中の『彼』を見つめながら首を傾げる部下の言葉に
手にしていたファイルをパタンと閉じ・・・・主任研究員はメガネを取りながら苦笑しなが振り返る。

「・・・・しょうがありませんね・・・・こればかりは・・・・『彼』は未だに出合っていないのでしょう・・・」

「出会ってないって?どういうことですか?クライスト主任・・・・」

上司の言葉に部下の男は首をかしげた。

アンドロイドは人間に忠誠を誓う
なにせ創造主が人間なのだから。

人間に敬意を払う
人間に忠誠を誓う
人間に危害を加えない

それが所謂『機械』・・・・・『アンドロイド』・・・
創られた存在・・・・

「彼は・・・・『コンラート』は最初の主人に対する思いを捨てきれないでいるのですよ・・・・」

「え?なんですか?それ・・・だってセクサロイドにせよアンドロイドにせよ・・・・
この研究所に戻ってきた段階で過去の主人に対する記録データは
全て消去されて新しい主の元に送られるんではないのですか?」

「確かにそうです・・・・その通りです・・・が・・・何事にもイレギュラーというものが憑き物です」

『コンラート』が眠る円柱のケースをそっと撫でながら・・・クライストは意味ありげに苦笑を浮かべた。


「『コンラート』は・・・ジュリア・ウィンコットという女性・・・彼が初めて出逢った人間への思いを
そのデータバンクに蓄積させたままなのです。
我らが何度消去を試みようとしても・・・・無理でした」


「なら・・・・『コンラート』はこのまま・・・・ということでしょうか?」

「そうですね・・・・今のままではこのままですね・・・
『彼』が・・・自分から主と認めるものが現われない限り・・・
彼の感情が正常化することはないかもしれませんね・・・・」

「それっていつのことになるのか・・・・」

「わからないでしょうね・・・ですので・・・上から『彼』の廃棄処分命令がきているのです・・・・・
可愛そうなことですが・・・・」

”かわいそうなことではあれど・・・・何度もここに付き返されてくるような目にあうことを考えれば・・・
忘れられない者の思いを抱いたまま消滅するのもまた救いの道なのかもしれませんね・・・・・

銀色の髪を掻きあげるように顔をあげたクライストは切なそうに・・・・・
無表情のまま眠る『コンラート』を見つめていた。




2007/07/01〜2007/07/12公開
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ