パラレル部屋

□夢みるアンドロイド〜エピローグ集〜
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夢みるアンドロイド・エピソード集〜事故直後編〜




「ゆーちゃん!!」

「ゆーちゃん!!」

「ユーリ!!」

宛がわれた病室に血相を変えて飛び込んできたのは、連絡を聞いて駆けつけてきた彼の両親と友人だった。


「し・・・・・静かにしてもらえますか?ようやく落ち着いて眠ったところですから」

ベッドの傍らの簡易イスに座っていた少年が眉を顰め口元に一本指を立てて飛び込んできた者たちを諌める・・・・
と、年長者であるはずの大人たちの方が途惑った表情を浮かべた。


「あ・・・・すまないな・・・村田君。
ユーリは・・・・?」

「ずっと興奮状態で・・・・さっき鎮静剤を処方してもらってようやく落ち着いて眠ったんです」

じっとベッドの上で表情を硬くしたまま眠る友人を見つめる村田の表情も硬く、眼鏡越しの瞳に遣る瀬無い疲労が浮かぶ。

「・・・・・健ちゃん、貴方の怪我は?大丈夫?」

「僕も渋谷も身体にはどこも傷一つ負っていませんから心配しないで?ママさん・・・・」

昔なじみの親友の母親の心配を労うように形ばかりの笑みを返す村田にユーリの両親の心は余計に痛む。

「僕が・・・僕があんなチケットをユーリに譲ったからこんなことになったんだ!!」

部屋に入ってきたまま呆然とドア付近に立ち尽くしていた友人・・・・
ヴォルフラムがいきなりその場に膝を折った。

美しい金色の髪を振り乱し、硬く握り締めた拳をセミライト製の床に叩きつける。

「貴方の所為じゃないわよ?ヴォルちゃん・・・・」
蹲ったまま泣き崩れる息子の友人の肩をユーリの母・・・美子はそっと抱きしめた。

「貴方の所為なんかじゃない・・・。
貴方はゆーちゃんが喜ぶと思ってチケットを譲ってくれたのでしょう?貴方の所為なんかじゃないわ。そんなに苦しまないで・・・・」

ね?と今にも泣き出しそうな瞳のまま・・・それでも優しく微笑まれヴォルフラムはたまらなくなり一層泣き崩れた。

「・・・・・そこで聞いたんだが・・・コンラッドが行方不明なんだそうだね?」

ショーマの言葉に村田は静かに頷く。

「僕らが無事ここに存在しているのは正直・・・・彼のおかげです。
コンラートがいなければ僕たちは間違いなくシャトルと運命を共にしていました」

シャトルの緊急脱出装置が操作不能に陥り、まさにシャトルの乗員乗客の運命は風前の灯だった。


『ユーリのこと・・・お願いしますMr.村田』

少し寂しげな笑みを残し席を立ったコンラッドがシャトル外部の非常用コックを開きシャトル本体と客室部を切り離した。

その結果・・・・




脱出用ポッドとしての役目を担った客室部は無事レスキューに救助され・・・・・


そしてコンラッドを残したシャトル本体エンジンは異常加速を起こしそのまま・・・・・・闇の中、星となった。


「・・・・ユーリは?」

そっとベッドの傍らに立ったショーマは涙の跡が残るユーリの頬をそっと手で拭う。

「・・・・一部始終目を反らすことなく見てました・・・・コンラートの名を叫び続けながら・・・・・・・」



あの悲痛な声が未だに村田の耳から離れない。


「そっ・・・・・・か・・・・・・」

ショーマはキュッと唇を噛んだ。



2007/10/17〜2007/10/26
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