パラレル部屋

□わんコン物語
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パタパタパタ・・・






軽快な足音にあわせるようなリズムを取りながらきちんと留め具がかかっていないランドセルの蓋が躍り
中身の教科書やノート・・・筆箱がカタコトと小気味よい音を奏でている

乱暴な扱いを多少されているのか・・・
傷の目立つ真っ黒なランドセルの脇の名札には、
彼の幼い頃に書かれた為か今を持って平仮名の『しぶやゆうり』という文字が読み取れる


持ち主は

黒髪黒目が基本の単一民族のこの国においても目立つほどのエンジェルリング艶やかな漆黒の髪


小さめでツンとした鼻柱とほんのりピンクに色づく可愛らしい唇
零れそうに大きなまん丸の・・・これまた新月の夜空を思わせるような煌めきを放つ漆黒の瞳

・・・がバランスよく配されているふくよか・・・ではないが柔らかく緩やかな曲線を描く
一見少女とも思えるような愛らしい顔立ちだが・・・


・・・・その意志の強そうな瞳を見るとどうやら少年のようである。



「渋谷ぁ〜待ってよ!狭い埼玉そんなに急いだって何にも逃げないよぉ〜」

元気に駆ける友を必死で追いかけているメガネの少年がその場に立ち止まって膝に手を付くと大きく背で息を吐いた

上げたあどけなさが残る顔が少々情けなく歪む


彼の息に合わせ背の横型ランドセルが上下に揺れる
そこに掲げられた小さな窓から覗めるのは『村田 健』の文字

「はぁ〜〜〜やくぅ〜〜〜村田!!」
少し先を行っていた有利が振り返ると焦るように駆け戻ってきて村田の手を取って引っ張る

「早くしないと今日のナイターは逃げちゃうよ!!」

まん丸な真っ黒の瞳を一層瞠きキリリと眉を顰めその顔は真剣そのもの
たまたま通りかかった周囲の者たちの視線を一瞬にして虜にしている。(が本人には当然全くすっぱりぽんと自覚なし)

むしろ、同行のメガネっ子村田の方は周囲の雰囲気に気づき小さな嘆息を漏らす
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