パラレル部屋
□夢みるアンドロイド
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俺の身体は機械・・・・
温もりなどあるはずもない
まして・・・
人の温もりなどこの手に・・・
この身体に感じるはずもない・・・・・・
「でもね?『コンラート』貴方さえその気になれば温もりを感じることなどできるはずなのよ?
貴方は人の痛みのわかる『人』のはずなんだから・・・・・」
あの人はいぶかしむ俺にそう笑った・・・・
長く淡い色彩の髪を風になびかせながら・・・・・
目の前の小さな主は床にぺたんと座り込み、
その漆黒の瞳を大きく見開きじっと彼を見つめていた。
「どうかしましたか?何か気になることでもありますか?ユーリ」
さほど抑揚のないまま・・・・『コンラート』は自分の主を見下ろす。
跪いても赤ん坊と既に成人サイズのアンドロイド・・・いや本来は大人を対象に相手をするはずのセクサロイド。
サイズの違いなど一目瞭然である。
まして・・・本来子守をする機能など持ち合わせてはいないセクサロイドである『コンラート』なのだ。
赤ん坊の目線に自分の視線を合わせてやるなどという考えは・・・・彼のデータには存在しない。
あるのは・・・・・「雇い主の女性が求めたらそれに応じじっと瞳を覗き見ること。そうすればその女性は快感を覚える」という情報データのみ。
だが・・・今『コンラート』の目の前に存在するのは言葉も理解しない赤ん坊・・・・・である。
でも何故か『コンラート』はその冷たい身の内が徐々に温かくなるような錯覚を覚えていた。
きょとんとして自分を見上げているその純真な邪推のない瞳を見つめているうちに・・・・・
「ユーリさま・・・・」
『コンラート』がそっと手を伸ばすと
ユーリは「待ってました」と言いたげに満面に笑みを浮かべ・・・・
必死で『コンラート』の傍に這い寄ってきてその手に頬を摺り寄せた。
その手の温もりを感じ安心したかのように・・・ユーリは幸せそうに微笑んでいた。
血の通わぬはずの手に感じる頬の温もり・・・・
自分の手に擦り寄ったまろく柔らかな頬の感触を指先で楽しむように『コンラート』はユーリの頬に手を添わせた。
感情を忘れた機械(アンドロイド)の『コンラート』の頬が一瞬緩んだ・・・・・ように見えた。
2007/07/13〜2007/07/25公開