パラレル部屋

□微甘苦
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「すごい騒ぎになったものね・・・あぁ〜喉渇いた」

その騒ぎの張本人を連れてきた橋本は他人事のように呟くと使われた形跡のないコップに
手近に栓が抜かれたままになっていたコーラの瓶の中身を注ぐとそれを
一気に煽るように飲む。

「・・・・・張本人がよく言うね・・・こうなることくらい君なら容易に想像できたと思うけど?」
「あら?感謝されこそすれ迷惑をかけたつもりは毛頭ないけど?村田・・・・あんただって有利に会いたかったでしょ?」

2杯目のコーラをコップに注ぎ、今度はじっくりと味わうようにもう一口口に含んだ橋本が上目遣いに目を細めた。

少し意地悪気に下から仰がれ村田は居心地悪そうに眉を顰め視線を反らす。

橋本と村田はほんの一時・・・・付き合ったことがある。
村田の有利に対する切ないほど報われない思いを橋本は知っていた。

「君はだから苦手なんだよ」
「あら?だから私はあんたが気に入ってるんだけど?」
苦虫を噛んだような村田に対し橋本はにこやかに笑う

同じ学校に通っている頃から・・・
渋谷有利という存在以外自ら他人との係わり合いを排除していた・・・
あまりに顔も頭もよすぎて誰もに敬遠されがちだった村田にちょっかいをかけてきたのが橋本だった。

有利とも仲のよかった橋本はすんなり・・・間に入り込んできた。違和感もなく。

有利が共にいた間は不思議と上手く進んでいた。

ところが・・・・・・




1年前・・・桜の蕾がようやく膨らみ始めた頃・・・・・・
卒業式の日、有利は消えた。






村田が別大学に行ったこともあり有利を失った微妙なバランスは崩壊し、二人の関係も終わった。
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