パラレル部屋

□わんコン物語
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やがて・・・
間もなく家に着くという場所にある公園近くに二人が差し掛かったときだった。


その公園はかなり広く子供たちの遊具や緑も充実していて周辺の住人たちの憩う場所となっているのだが・・・
そういう場所なだけに人目に付き難い陰の場所も点在していて・・・・

ごく偶に悪さをするものの温床ともなっていた。





ギャン!!!

鋭い悲鳴にも似た小さな小さな鳴き声がほんの一瞬・・・・その場を駆け抜けようとした有利の耳を劈いた
驚き顔を挙げ周囲を見渡しても・・・・もはやなにも聞こえない


「どしたんだい?渋谷」

怪訝そうに眉を顰める村田の問いに対し答えることなく周囲をうかがっていた有利は
クッと表情を強張らせると公園の奥へと向かう階段へと駆け出した。

「渋谷ッ!!」

驚き慌てて追いかけてこようとする村田を振り返ることなく有利は自分の全速力で駆けた。






ヴヴヴ・・・・・


「このやろう!生意気な犬だな!!」
「もう少し痛い目を見せてやらなくっちゃ」
「人間に楯突いたらどんな目にあうか教えてやろうぜ!!」

低い唸り声に混じりまだ少年の声が重なるように緑の影から聞こえてきた。


有利の目に飛び込んできたのは・・・・手に手に木の棒や石を持った数人の少年に取り囲まれた2匹の犬の姿だった。

さほどの大きさではない犬たちは痛々しいほど全身のあちらこちらから血が滲んでいて・・・
特に薄茶色の毛並みの犬の目尻の上の辺りから血が流れ顔の毛を赤く染めている
その口は紐で戒められ口を開きその牙で相手を威嚇ことは愚か吼えることも出来ないように封じられている

傍の木の幹にさほど長くないビニールの荷造り紐で逃げることもままならないように首の辺りを結び付けられている


2匹は今を持ってその瞳は怒りに打ち震えるように前を立ち塞ぐ狼藉者たちを唸り睨みつけていた

「何してるんだ!!お前ら!!」
少年たちは声に驚き振り返り・・・・そして自分たちを罵倒してきた相手を見て重ね重ね驚いた






当然である

自分たちを今睨みつけているのは・・・・なんとも愛らしい少年

丸い大きな瞳に怒りを漲らせて足を踏ん張って両手に拳を握り締め・・・所謂仁王立ちでその場に立ち尽くしている

「へぇ〜〜〜お前、渋谷じゃん」



彼らは知っていた
その少年が自分たちの学校の2学年下の渋谷 有利のあることを・・・・。
(というか彼らに限らずこの近辺の誰もが有利の存在を知っているのだけど)



小さな身体で自分たちを睨みつけている姿は仔猫か何か・・・とにかく愛らしい小動物愛玩動物を思わせて・・・
少年たちの中の苛虐な心に一層油を注ぐだけだ。


「かっわぃい渋谷ちゃんが何か御用ですかぁ〜?」
「俺たちと遊びたいんなら遊んでやるぞ?」
「下級生の世話はやっぱし上級生として当然だもんなぁ〜〜」

少年というにはかなり荒んだ様子の少年たちの視線が有利を嘲るように覗き込んできた



同学年から言ってもかなり小柄な有利に対し、少年たちはかなりの大柄だ
(ついでに性悪そうだ)

そんな彼らに取り囲まれて有利に勝ち目は皆無だ
少年たちもそう考えていた


目の前の愛らしい少年の零れそうなほど潤む漆黒の瞳から一滴の涙が零れ滴るのも時間の問題だ・・・・・と。






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