パラレル部屋

□双黒の狼王
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「ユーリさま!いけません」
側近の銀色狼に咎められて、双黒のユーリは思わず首をすくめた。
「何故いけないの?ギュンター・・・・・・外はすごく明るいよ?何故ここから出ちゃいけないの?・・・・」

ユーリは首を捻る。
こんなに明るく楽しそうな世界を目の前にして・・・・


光の中・・・虫達は舞い鳥は啼きさざめき・・・・
外は華やかに色づきユーリを誘ってるかのように草も樹々も花も・・・風さえも彼を惹きつける。

薄暗い洞に篭っていなくてはいけないなんて・・・ユーリは小さな頬をぷぅと膨らませた。
「なんで駄目なの?」
彼は不満げに唇を尖らせ・・・小首を傾げる

「明るいうちですと人間がいつ現われるかわかりません・・・大変危険なのですよ?お分かりでしょう?」
諭すようにユーリに語るのは・・・彼の世話を一手に引き受けている銀色の毛並みを持った種族のもの。

ユーリは黒・・・・髪も目も・・・・全てが黒色・・・・双黒の毛並みを持つ。
それは森に住む者たちにとって「貴色」と言われるもの・・・・


闇は危険から身を隠す優しきもの・・・
双黒はまさにその身に闇を纏うもの・・・・・
その存在は希有・・・・・


ゆえに彼は森の者たちを統べる王とし生まれながらに選ばれ定められた。
森を護るものとし生きることを科せられて・・・・・
生まれながらに背負った運命の重さを・・・ユーリは幼いながらに感じ取っていた。



「いいですか?ユーリ様、貴方は我ら狼一族の最も気高い
この一族唯一の双黒狼なのです。
貴方様になにかあってはあぁ〜〜〜この銀色狼であるギュンター・・・
貴方様のご両親に顔向けができません」

そういいながら銀色の髪を振り乱す世話係の形相に・・・毎度のことながらユーリは辟易していた。

「わかってるよ・・・ギュンター・・・そんなに汁を飛ばさないでよ・・・・」

ユーリが許されている自由は・・・・
闇が森を覆う深夜のみ

ユーリが会えるのは
同属の狼一族のみ・・・・

ユーリは隙間から零れる日の光を見つめ小さくため息をついた。
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