パラレル部屋
□双黒の狼王
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以前はこれほど厳しくはなかったらしいのだが・・・人間が森のすぐそばに
村を作って以来、何人もの仲間たちが彼らの手により殺められたという事実を・・・
狼一族たちは忘れなかった。
「でも・・・そんなに人間って怖いのかな?」
ユーリはまた首を傾げる・・・
ユーリは母も父も知らない・・・・
物心ついたときには既に一人でこの洞の仲間達と共に暮らしていた
幼い頃に亡くなってしまったユーリの母親の代わりに育ててくれたのは彼女の親友だった毛並みの美しい金色の狼・・・
彼女が寝物語に語ってくれた・・・
かつて罠に嵌り身動きできなくなった白狼・・・つまりユーリの母を助けてくれた若い人間がいたことを・・・
ユーリを身ごもり尚且つ足を罠で傷つけてしまったその白色狼を・・・
人間の男は罠から助け出し、傷を手当し、仲間たちが待っている森のすぐ
そばに放ってくれた・・・・。
「人間だってそれほど悪い人ばかりではないわ・・・・
優しくて賢くて・・・・私たちのことをわかってくれる人だっているはずなのよ」
ユーリの黒い髪を何度も何度も撫でながら・・・・美しいその人は微笑みながら何度も語ってくれた。
ユーリは彼女の言葉を頑なに信じていた。
『かーさんは人間にだって怖い人ばかりじゃないって言ってた・・・
俺はかーさんの言葉を信じる・・・・・』
「いつか必ず・・・人間と森の民が仲良く一緒に過ごせるときが来る・・・・絶対に・・・・」
互いを恐れず手を取り合い森を糧に生きていくことが出来る未来がきっと来るに違いない・・・・
洞の小さな隙間から空を眺め、ユーリは漆黒の瞳を煌かせた。