書物

□桜並木〜I do not forget you〜〔雪サイド〕
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『新しい私へ、はじめましてだよね。突然だけど、前のあなたには、すごくすごく大切な人がいたんです。その人がいたから、前のあなたがいて、今のあなたがいます。一つだけお願いがあります。もしも、日本に帰ることがあったら"高野太陽"さんに逢ってください。そして、太陽さんが有名になる夢を叶えたか、を確認してください。私は、もう、いないのになんで?って想うかもしれないけど、知りたいのです。でも、きっと、太陽さんに逢ったら、あなたは、彼を好きになっちゃうよね、その時は私の事は気にしないでね。彼を愛してあげて、そして、彼に愛されて下さい。一緒に入ってるMDは彼が作ってくれた曲です。手術後の私が聴いて、私が私を思い出したらいいな、と思って入れました。どうかな?ああ…やっぱり思い出さないか。寂しいけど、しかたないよね。でも、私の願いをどうか叶えて下さい。それから、荒瀬さんへ、この手紙を見せて下さい。荒瀬さん。荒瀬さんには別のお願いがあります。太陽さん、や、兄には私の記憶がないことを伝えないで下さい。太陽さんには、いつまでも笑顔でいてほしいから。逢うなら私らしく、逢うように、私に伝えて下さい。最後の我が儘です。今更だけど、新しい私が産まれた
今日は、人生の二つ目の私の誕生日だから、この世界へようこそ。HAPPY birthday 雪』
目の前には知らない自分から自分への手紙が書かれていた。麻痺のする腕で必死に書いたのだろう。便箋もくしゃくしゃだった。
「ねぇこの高野太陽って人はどんな人?」
退院の支度をする看護士であり友人の女性に聞くと、その歌みたいにまっすぐな人よ。と笑う。雪は、ふ〜ん、じゃあ日本で逢ってみようかな、と手元の日本の医大のパンフレットを見る。
東京に着くなり、耳に聞き慣れた歌が聞こえてきて、頭痛を感じたが、自分よりも重傷な人を見つけて近寄ろうと、すると、自分より早く近寄る青年がいた。ああ、多分、君が、高野太陽、私が好きだった男。
「有名になる夢は叶った?」
インディーズジャックス?多分有名になった、ていいたいのよね。約束は果たしたはよ、前の私。
「好きになりそう?」
好きかは、分からないけど、不思議とドキドキする気持ちが止まらず、勉強、勉強と、ごまかす。
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→あとがき
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