書物
□涙味のちょこれーと
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12月の終業式の日。
昇降口。
その日は風と雪がすごかった。
閉まったままの戸がカタカタ音を鳴らしてうるさかった。
「好きだよ」
ずっと憧れてた後輩に言うと、後輩は無言だ。
「ごめん。ただ言いたかっただけだから」
俺が謝って、立ち去ろうとすると、後輩は、服の裾を握りしめて泣き出す。
「泣かないでよ」
後輩は泣いたまま、でも、でもっと呟く。
「私は、先輩の弟さんが好…」
後輩は、泣きながら呟く。
が。
途中から言葉が途切れる。
キスされたからだ。
「やだ、離して」
泣きながら離れようとするけれど、俺は離さないと言いたいようにぎゅっと抱き締める。
「何してるの?」
階段から降りてきた男は、抱き合う二人を見つめて呟く。
「あ…」
後輩は泣きながら男に助けを求めるように見つめる。
男は俺を睨んでから後輩の腕を引く。
「大丈夫?」
後輩は、男に抱き付いて、蘇って来た恐怖感からか震えながら泣き出す。
「兄さん、最低だ」
弟は、後輩の震える肩を抱いてすり抜けて昇降口を出て行く。
「くそっ」
座り込んで頭を抱える。
その震える肩も、涙も俺が抱き止めたいのに。
[泣いてごめんなさい]
送られてきた君からのメールに、泣き出す。
「好きだ。好きだ」
携帯を握りしめて呟く。
「何で謝るんだよ。何で」
君はそうやって、僕の心を握りしめて離さないんだ。