書物

□桜並木〜I do not forget you〜
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僕は…まだここで歌っているよ。ねぇ届いてる?


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大切な言葉や記憶は
忘れてしまおう、君は
覚えていなくてもいいんだ
今一瞬一瞬が僕の記憶に
残っていればそれだけで…
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帰宅ラッシュが始まり人が多く行き交う都内のとある駅の近くの公園から切ないラブバラードがながれていた。
人々は興味本位か歌のする方に集まる。
どうやら人だかりの中心ではインディーズバンドがストリートライブをしているようだった。
友人と二人でこの後の予定の話をしていた少女は歌を聞くと、その場に立ち止る。
友人は急に少女の気配が消えた事に気付き少女を探す。
見つけた少女は数歩離れた位置でぼーっと立ち止りバンドの方を見つめていた。
音楽に全く興味ない少女が興味持つのは珍しいので友人は近付くと「楽しそうだし、もっと側まで行こうか?」っと誘うが少女は聞こえていないのかその場に立ち尽くしているだけだ。
友人はまぁいいかと納得すると演奏に目を向ける。
少女はなぜか歌を聞いて無意識に涙を流した。
『こんにちは、remembrance of piece訳してROPです』
自己紹介が始まりその中の一人に少女の目が止まる。
『ギター、vocalの太陽です』
背は高くも無く低くも無い、少し日焼けした肌に黒い髪と大きな目、良く通る聞きやすい声域、癖なのかマイクスタンドのマイクを何度も握りかえる。
『さっきの曲は…』
途中から声が遠くなる。
少女が頭痛を感じてうずくまって頭を抱える際に耳まで塞いでいたからだ。
隣りで座り込む少女に友人は驚いて傍らに座ると背中を撫でる。
「ちょっと大丈夫?…大丈…」
友人が心配そうにしてるけど頭痛が邪魔をして中々聞き取れない。

(大丈夫…?)

頭痛の中、ふっと少女は懐かしい声を思い出した。夢に時々出て来る優しくて温かい声を…。
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