書物

□桜並木〜I do not forget you〜
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「またいない…」
薬の時間に病室を覗いた看護婦は日課なのだろうか呆れを含んだため息を吐くと患者を探しに院内に歩先を向ける。
『咲良 雪さん病室に…』
院内で流れる呼び出し放送は空気の入れ替えの為に開けられた窓から病院の庭にまで流れだす。
庭と言っても、公道から病院の駐車場やロータリーに続く約1km程の車道の両端に桜並木道を作り桜の木の下に等間隔にベンチを設置したものだ。
元々は空気の洗浄やら患者のリハビリ兼散歩道やらとして作られたが今では来院者や通院者以外の人々も花見をするちょっとした公園化していた。
「はぁ…」
病院から数m離れたベンチに座っている少女は何回目かの溜め息を吐く。
「つまらない…」
ポソッと呟くと少女は眠気に必死に絶えようとしたが、しばらくするとウトウトし、そのまま意識を手放す。
はたから見たらあまりの陽気の良さに眠気を感じ昼寝を始めた様に見えるように。
実際に今日は気温は高めで春真っ盛りの陽気で、時折吹く強風以外は心地よい桜の香りもあり絶好のお昼寝日和だった。
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