書物

□桜並木〜I do not forget you〜
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「大切な…桜に似た…」
太陽は詞になりそうな単語をメモに書出す。
「あっ違う違う」
煮詰まるとメモを破きバッグの下に挟み白紙の紙にペンを走らす。

-…びゅ〜〜

「ぅわっ…」
強風により桜の花びらが舞い上がり一瞬視界が遮られやっと視界が開けた瞬間花びらに紛れて何かが舞っていた。
「えっ、あっ、やべ」
ふと隣りの鞄の下に簡単に挟んだメモがないのを見て、吹き飛ばされていたのが自分のメモと気付き慌てて追いかける。そう時に限って風は和らぐ事なく立て続けに吹き上げる。
「ったく」
追っても追ってもぎりぎりの指先をかすめるだけだった。
数十m走るとやっと風が和らぎ地面に落ちたメモを拾う。
「はぁはぁ…やっと捕まえ…」
拾い上げ、顔をあげると目の前のベンチに目が釘付けになる。
地毛か染めてるのか風になびく赤茶色の長い髪は色素が薄く光加減で桜色にも見える。白い肌は微かに気温のせいか微かに赤みを帯びている。
緩やかな眉毛、長い睫毛、その瞳は瞼に閉ざされて見る事はできない。
化粧をしているのかしていないのかほんのり赤い唇は小さく開いているが声は出ている様子はない。
規則正しく動く肩や胸は眠っている事を表す。
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