書物

□不揃いな13色クレヨン(上)
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「変な頭、団子虫ぃ」

女の子の頭に二つ乗った団子のように丸めた髪を指差し男の子が騒ぐ。

「わぁん」

女の子は耐えきれなくなり泣き出す。

「先生、心(しん)君、またイジメてる」

子供が先生のエプロンを引く。

「あらあら、こんな泣いちゃって」

一人の保育士が女の子を抱き上げてあやす。

「心君、なんで毎日イジメるの」

もう一人の保育士が 心 を見つめ、駄目だよと諭す。

その後一時間に一度のイジメを止めながらお昼寝の時間になり、保育士達はやっと落ち着く。

「全く参ったわ」


保育士の一人がお茶を飲みながら言う。

「確かに今日は一段と激しいわね、流石に疲れた」

ぐったりする保育士の頭を他の保育士が撫でる。

「まあまあ5才の男の子好きな子に対する態度なんて、みんなあんな感じよ、それに明日までだから」

保育士達はスヤスヤ眠る心を見つめて、色々あったわね、と、ため息を吐く。

「星川 心くんお迎えよ」

保育士に呼ばれ、心は帰り支度をしながら、振り返ると、園室で迎えを待つ女の子に近寄る。

「ねぇ、まだ帰らないの?一緒に帰ろう」

手を差し出す心に女の子は泣き出す。

「あらあら、今日は泣き日だね」

保育士が走り寄り抱き上げてあやす。


「心、またイジメて」

母親が近寄り、無理やり、心の頭を下げて謝らせる。

「こんばんは」

女の子の父親が迎えに来て、女の子は父親に走り寄り抱きつく。

「すいません。うちの心が…」

母親が深々頭を下げて謝る。

「いえいえ、この子が泣き虫で…すいません」

女の子の父親も謝り、女の子をあやす。

「ほら、泣き止んで、バイバイしなさい」

泣きじゃくる女の子の背中を父親が叩くが、女の子は泣きじゃくるままだった。

「心、バイバイして帰ろう」

母親が言い、心も小さく手を振り帰る。


「ママ、おひっこし、もうすこし先にならない?」

母親は、無理ね、と困り顔で笑う。

「明日の朝には、お車でおばちゃんちにしゅっぱつよ」

心は寂しそうに来た道を振り返る。

「心?」

母親が立ち止まった息子を見ると泣き出す。

「やだ、ぼく、おばちゃんち行かない」

倒れて泣きじゃくる息子を抱き上げてて母親は心配そうな顔しながら自宅へ帰る。
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