書物

□涙味のちょこれーと
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「あっ」

バイトをして自宅に帰ると後輩が帰る時にぶつかる。

弟があからさまに後輩を庇うように抱き締める。

「もう、しないよ」

静かに言うと、弟はほっとした顔をする。

後輩は何故か寂しい顔。

(ほら、また期待させる顔…泣かせたい)

「今日はね」

「兄さん!!」

すかさず声を荒げる弟と、怯える後輩に笑いかけて部屋に戻る。

玄関側の自分の部屋から外を見ると、後輩と弟が抱き合っている。

キスして。

とでも言われたのか、後輩は恥ずかしがりながらも、おずおずキスを自分からする。

見たくなくてカーテンを閉める。

しってるよ。

君が好きなのは俺じゃない。

でも、なら、どうして。

入学式。

放課後の音楽室。

バイオリンを片してた。


冷たい指からは血が出ていた。

『痛いんでしょ?』

君は俺の指を手当てしてゆっくり抱き締めて呟いた。

『私も痛い』

泣きそうな微笑みをしながら寄り添った。

君の理由(きもち)はしらないけど同じ痛みを感じた。

『はじめまして』

でも、次に会った君は知らない顔して、弟の彼女の顔で笑う。

『覚えてないの?』

『覚えてないの…』

問い詰めた時の君の寂しい顔を良く夢に見るよ。

「私は彼が好き」

君からの拒絶は、いつも嘘つきで。

"好き"

を伝えてくる。

例えるなら、君の言葉はチョコレート。

一口目はbitterなチョコレートで。

二口目はmilkなチョコレートで。

つい次が欲しくなる。

もし、三口目があるなら味わいたい。

"彼氏"

と言う立場での味。

意地でもって、好きにさせたい。

君から"好き"を聞きたい。

それには弟が邪魔だ。

たくさんの罠を仕掛けて。

二人をバラバラにしたい。

彼女を独占したい。

でも、今、その気持ちはない。

君はもういないから。

春になったら。

君に会いに行こう。

そしたら、素直に言おう。

"君の涙が好きなんだ"

って。



end
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