書物

□-貫-
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西洋系の男は、自分の上唇を舐めてから、英語で、日本語は難しく苦手で詳しくないと話す。
「うるさい、この作品の良さがわからない限り止めないから出てけ子豚!!」
通訳すると、小太りな男は、怒りで顔を赤くする。
「あら、これは私の意見だったわ」
にっこりと小馬鹿にしたように笑って、ごめんなさいっと謝るが、小太りな男は、わなわな震えだし、イライラしい顔をする。
「小娘のクセに私を侮辱するのか!!」
---ドンッ
「…っ」
小太りな男が私を突き飛ばし、バランスを崩し、後ろに倒れそうになると、西洋系の顔の男が受け止めた。
「(野蛮な男だ。立ち去らないといい加減殺すぞ)」
西洋系の顔の男に睨みつけられ小太りな男は、うっと怯えを見せ、覚えておけ、っと古い言葉を残して去って行った。
「全く、君は、相手をちゃんと見て話せば良かったのに」
頭上を見上げると西洋系の顔の男は仕方ない奴っと呆れ顔で笑っている。
「なら、貴方が話せば良かったじゃない、日本語、お上手みたいだし」
西洋系の顔の男は、私を立たせると、痛い場所はないか?と聞く。
紳士的なのはお国柄?
大丈夫だと言うと、男は安心したのか柔らかく笑い頷いた。
「俺は、カレン。君は?」
「私は瑛子」
名前を聞かれ、何故だか、自然に答えた。
「瑛子」
カレンが確認を兼ねて私の名前を呼ぶ。
生まれ初めて名前を呼ばれたみたいに、嬉しくて、胸が熱くなり、喉元の息が詰まる気がした。
「あっ、ヤバい、会議!」
ふと、見た時計の時間に慌てる。
「瑛子?」
カレンは、心配そうな顔で私を見つめる。
「また来るわ」
大丈夫と笑うと、カレンは、近くの展示された写真の隅を破いて、何かを書いて渡してくる。
電話番号だ。
自宅だろうか、会社だろうか、市外局番が頭にある。
「もう少し話がしたい。いつも22時には、家にいるから」
自宅だと確定する。
「わかった」
わかった、その言葉が、すぐに口から出たことを内心、すごく驚いていた。
まだ会って間もない人を、警戒心なく受け入れている事。
自分もカレンと、もっと話したいと思っていた事。
何故だろう。。。
会議中もそんな事ばかり考えていた。
帰宅し、お風呂のスイッチを押し、ソファーに鞄と上着を投げ出す。
キッチンに行き、鍋に水を入れお湯を沸かす。
沸いたらパスタとキノコを投げ込み、タイマーを付ける。
時計を見ると21時45分。
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