書物

□僕のせいで明日君が死んだ
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三月にしては暖かく、週末の駅前では、半袖の人間も多く見かける。一人の青年が時計を見ると針は十八時を差していた。青年は当たりをゆっくり見回す。何度目だろうか。
「新発売の化粧品のサンプルです。」
見回した視線をゆっくり元に戻すと、一人の女性がロータリーの広場で化粧品のサンプルを配っていた。制服なのだろうか、体にぴったりフィットした青色のワンピースを来ていた。ぴったりとしているせいか、どうしても視線は体のラインに走る。細すぎず太すぎない男の理想的体系に気を惹かれたのは、もちろん自分だけでなく、さっそく若い男が配っていた女性に寄っていく。
「ナンパかぁ、暇だね」
時計を見ながらチラッと見ると、女性は、困った素振りをしている。若い男はそんな女性の肩を抱いて何か勝手に話して盛り上がっている。
「誘う奴もだけど、断れない奴もどうだか。」
やれやれと思いながらメールを打ち、送信してから、女性に視線を戻すと、女性が自分を目掛けて走って来ていた。
「お願い助けて。」
女性は自分の背後に隠れる。若い男は、男いるならそう言え、などと勝手を言って去って行った。
「はぁ、しつこい奴って最低。」
自分の背後から顔を出して、あっかんべ、っと舌を出す女性に呆れ顔になる。
「あのさ、そういう事は、あいつに直接やらなきゃ意味ないじゃん。」
女性は、自分の前に出てくると、自分の足を思いっきり踏む。
「出来たら苦労しないわよ。」
そういうなり、走り去ってしまった。。恩を仇で…とはこの事だと、イライラしく女性の去った方角を睨む。
「キイラ?」
長めの髪を一つに縛った男がゆっくり近づいて来た。キイラと呼ばれた自分は、立ち上がってため息を吐く。イライラしたからと言って何が変わるわけじゃないので仕方ないと諦めたからだ。
「そうだ、ナナ先輩が今日くるって」
友人が待ち合わせ場所に向かいながらした話題に、キイラはころっと気持ちが変わった事に気付いた。
「マジ!?」
ナナ先輩とは高校時代の部活の先輩で部長だった。誰にでも優しく、柔らかい雰囲気を醸し出す先輩は学校でも、良く知られてる人だった。七月七日午前七時七分に産まれたと言う話から、部員全員がいつのか、ナナ先輩と呼ぶようになっていた。
「お前、ナナ先輩を好きだったよな?告るなら今日だぜ?」
友人が自分の肩を抱いて、冷やかす。うるさいっと言いながらも、どこかで、そうなれたら良いなと思いながら同窓会の会場に向かった。
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