書物

□僕のせいで明日君が死んだ
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---ピピピ…

間の抜けた電子音が鳴り響いて、音の元を探すと、ナナ先輩の携帯だった。相手は、ヒロ。先程間違われた相手だ。イタズラ心で通信を切ってやろうかと思ったが、すぐに止めて、ナナ先輩を起こす事にした。
「ナナ先輩、ヒロって人から電話、ナナ先輩起きて下さい。」肩を揺らすと、ナナ先輩は、いきなり飛び起きて、自分から携帯を奪い取ると、ふらふらした足取りで部屋から出て行った。ぽかんとする自分は、ふと、時計を見つめ、とりあえず講義に出ないとと、案外冷静な判断で部屋から出た。電車に乗りながら、レポートの文章を携帯で打ち込み、司書をしている先輩に印刷を頼むメールを添えて送信した。途中で友人と出会ったが、ナナ先輩の話はしなかった。皆の憧れだった先輩の醜態を話す気には、なれなかったからだ。
「そう言えば、昨日来てた、奴が、ナナ先輩に声かけたら、彼氏いるってふられたらしくて、落ち込んでたぜ。」
キイラは、一瞬びくっと身を強らばせたが、友人は、知人に手を振っていて見ることはなかった。彼氏と言うのは、朝、ナナ先輩の携帯に電話があったヒロと言う人間だろうか。携帯を握りしめ、部屋から出て行くナナ先輩を思い出した瞬間に、胸元に小さな痛みが走り疑問を抱いた。
「キイラ?」
友人が黙り込んだキイラを不思議がり、首を傾げる。
「ああ、ナナ先輩は美人だし、優しいから彼氏ぐらいいるさ。」
その時、自分はちゃんと笑えてただろうか。すぐに、図書館に用事を思い出し、立ち去った。しばらくは、勉学に励もう、そうしたら、この、胸元の痛みもなくなるだろうから。
「味玉先輩。」
図書館に入ると、日焼けした坊主頭の男が受付から頭を出した。
「お前ね、人に印刷頼んでおいて、味玉先輩はないだろ。」
味玉先輩と呼ばれた男は、本名は玉城(たまき)と言うが、日焼け肌に金髪の髪は日の当たり加減でスキンヘッドに見え、縦長な顔が玉子に似てる為、学校内では、味玉先輩と呼ばれていた。玉城は、印刷したレポートをいらないなら、とシュレーダーに入れるふりをする。
「だー。要ります。めちゃくちゃ必要です。」
キイラは、頭を下げて祈るジェスチャーをする。
「玉城、ダイエットコーラなかったよ?」
キイラが、玉城に頼むよっとすがりついていると、奥から間の抜けた声がした。そこにいたのは一番逢いたくないナナ先輩だった。
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