緋月宮の女官〜春告げ鳥の唄〜

□終章
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「兄上、言っておくが私はかなり酒に強いぞ」


「血筋とは恐ろしいものだな。私もだ」


杏茲が後ろから、陶嘉にこっそりと耳打ちしてくる。


「朧朏様、ちっとも寡黙なお方ではいらっしゃらないじゃないですか。むしろ、沢山お話しになられていらっしゃる様にお見受け致しますけれども」


以前、浴びるほど朧朏について、陶嘉から聞かされていた杏茲は、不思議そうだ。


「朧朏様の中できっと、何かが変わり始めていらっしゃるのよ。それも良い方向にね」


きっと、何もかもが良い方向へと向かっている。

陶嘉は、そう信じた。






「お忙しいのではないですか?」


そのまま陶嘉の局へと立ち寄った曦曄に、彼女は声を掛ける。


「今日は両親と叔母上にお会いする為、政務は休むと言ってある。困るのか?」


陶嘉は嬉しそうに首を振る。



「私は、男性の振りかざす権力には決して屈しまい、と今まで思って来ました。でも……。曦曄、あなたと結婚するのは権力に負けたのでも、結婚に妥協するのでもないわ。私は、自分の意思で貴方と一緒になる道を選んだの」


陶嘉は曦曄を真っ直ぐに見つめた。

曦曄の瞳には温かな光がともっていた。



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