緋月宮の女官〜春告げ鳥の唄〜
□終章
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今日は嫁入り前、最後の家族との面会日だ。
春宵宮に、陶嘉の六人の兄達、それに父が集まってきた。
「全く、一時はどうなる事かと思ったぞ」
「いやいや、これで陶嘉も世間の厳しさというものを知ってだな……」
「前から気になっていたのだが、曦曄様は、噂通り、男前でいらっしゃるのか?」
六人が一気にまくし立てるものだから、うるさくて堪らない。
「ところで龍秀兄様、結婚のお相手はまだ決まっていらっしゃらないの?片っ端から断ってしまう、と父様がしぶっていらしたわ」
それを聞いた途端に、今までぴーちくぱーちくと囀っていた六人がぴたり、と止まった。
「陶嘉、驚くなよ」
ふふん、と何故か自慢そうに次男の龍成が言う。
「でも、いささか陶嘉には辛い相手かもしれないな」と長男の龍達。
「何?まさか琉莉とか言うんじゃないでしょうね」
「これ、敬語を使わぬか!」と父の龍陽が叱責する。
「琉莉様は今、僕があこがれている方だよ」
いささか気分を害したらしい、末の兄の龍英が不服そうに呟く。
思わず「げ」と声を発しそうになる。
「龍英兄様、趣味が悪すぎるわ。あいつ、私の事を平手打ちにしたのよ。料理に髪の毛も入れられたし」
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