緋月宮の女官〜春告げ鳥の唄〜

□終章
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「お前、そんな事をされていたのか!?」


父を含めた、七人が同時に騒ぎ立てる。

ぼそっと、「琉莉様は諦めようかな……」という声が聞こえてきた。

ああもう、こんな話をしたいのではなくて。


「それで、結局龍秀兄様は……」



「ああ、前から決めていた。杏茲だ」


陶嘉は嬉しさのあまり思わず、涙ぐみそうになった。


「声も出ない程、衝撃的だったのか!?陶嘉!」と次男。


「うるさいわよ」、と冷たくあしらってから改めて龍秀を見上げる。


「杏茲に好きな人をこの前聞いたの。そうしたら龍秀兄様だって言うから私、思わず大声を上げてしまったわ」


なんだ知っていたのか、つまらん、という雰囲気が辺りに充満する。


「そういえば杏茲って、よく若い娘達が好むような物語を読んでいたわ。私は見る気もしなかったけれども。もしかしてあれって、龍秀兄様の所有物なの?」


「当たり前だ。毎回感想文を私が添削していた」


「……」


全員が黙り込む。

それで愛が生まれるのだから、人間とはげに不思議な生き物である。


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