気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女3
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璃乃は、先程まで一緒に居た涼子が「氷室明の恋人」と言った事から、実は過去に一人自分にも彼氏が居た事を思い出していた。
高校に入ってすぐに、中学も一緒だった田中という男子と付き合ったのだ。
こちらは何とも思っていなかったが余りにもしつこいのでOKサインを出した。
付き合いだすとすぐに手を繋ぎたがったり、抱きしめられられたりしたので、一ヶ月もしないうちに別れてしまった。
氷室にも昔、彼女とか居たのかな。
そう思うと璃乃の胸はザワザワと音を立てた。
あんなに女子が騒ぐんだもの、過去に1人や2人、彼女が居たとしても全然可笑しくない。
もしかして…私の気持ちにも気付いて…ないよね?
黒目がちな意思のはっきりしたあの瞳に見つめられると、時折自分の心が見透かされているのではないかと思えてきてしまう。
菅野先輩に付き合えないと言った理由は氷室から来るものだ。
今まで一人きりで寂しかった1年間を埋めるように、この一ヵ月半氷室と時間を過ごしてきた。
私は氷室が好きだ。
でも…それを伝えてしまったら今のこの関係はどうなるの?
一緒に登校したり、夕飯を作ったり、笑ったり、怒ったり……。
このままで居たい。
いや、このままで居よう。
見透かされた。
しかも一度しか彼女を見た事のない姉に。
俺って、そんなに分かり易いのか?
いや、女の勘ってやつか?
最後の涼子の笑みを思い出して、それだとしたらもっと怖いなと思った。
自慢ではないけれど、女にもてない事はない。
でも、今まで本気で人を好きになったことがないような気がする。
よく、何か勘違いした奴に手紙や物を押し付けられたり、口で直接告白されてきた。だが。
皆、上っ面の俺しか見てないんじゃないか?
だけど、あいつは違う。
凄く変な奴だけど、俺を笑わせたり楽しくさせてくれる。
一緒に居ると心が休まる。
その時。携帯のメール着信音が鳴る。
岡野かな?
吉田は筆不精だからな…と思わず笑いながら画面を見ると『死ね』の二文字が目に入った。
その頃、璃乃も先程届いたメールを見て青ざめていた。
『君にあの男は似合わない。付き合っていないならオレと付き合って欲しい。愛してる愛してる愛してる…』