気まぐれな彼女

□気まぐれな彼女3
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真記子が来ると知らされていたのだろう、インターホンで相手を確認すると、飛びつく様に璃乃が出て来た。

「マキコーッ!!」

「はいはい、大丈夫だった?」

「うん」


…俺はどうでもいいって訳?腕を組んで立っていると、

「ほらリノ、氷室君も心配してくれたんだよ」

「うん、ありがと」

「リノが好きな『ポシェット』のレアチーズケーキ買って来たから皆で食べよ」

「ありがとー!!」



二人を見ていた氷室が思わずプッっと吹き出した。


「ご主人様にじゃれてる犬みて〜」

犬。

「犬!?氷室は何でいつもそう失礼な事を…」

とぶつぶつ言いながらも、嬉しそうにお茶の仕度を始めた。

「あんたの前ではあいつ、いつもああなわけ?」

「えっ、違うの?」

ちょっとの間考えて、

「何かいつも怒らせてる様な気がする」

「へー、失礼な事でも言ってるんでしょ」

……正論かもしれない。





皆でケーキを食べながら、氷室が話す。


「昨日、俺の所にもメールが来たんだよ」

璃乃がびっくりして氷室を見た後、真記子を睨んだ。

「ごめんリノ、話しちゃった。でもこれで変な気使わなくても済むでしょ」

氷室が携帯を取り出す。

「昨日の夜来たメールの差出人のアドレス、これ?」

璃乃はそうっと携帯を受け取って画面を見ると、強張った表情になって頷く。

「氷室、これ…恐いと思わないの?」

「別に単なる悪戯じゃん」

と言いかけたその時、自宅の電話が鳴った。


「もしもし…あれ、FAXみたいだ」




ピーッと音がして、FAXから紙が出て来る。





それを見た璃乃が「やだ……」と呟いたのを聞くやいなや、氷室はバッとその紙を奪った。


ワープロの大きな文字で一面に「愛してる」と書いてある。



「まだ来るみたい…」

今度は「付き合ってくれ」、次は「あいつと登校するな」、その次は「あいつを殺すぞ」


…計、10枚近くのFAXが送られてきた。


「氷室、どうしよう。恐い…」

「悪戯にしちゃ、手が込んでるな」


咄嗟にメモった電話番号見つめながら、警察に届けるか?

この番号もここら辺じゃないな?」と言うと、

「警察はちょっと…」と璃乃は顔を強張らせる。

氷室はため息をついた。

やっぱりな…。

「こりゃ何だか相手がやばそうだな。吉田、明日から帰りも一緒に帰るぞ」

「え、でもそれじゃあ余計に相手を刺激するんじゃない?」

と真記子が言う。

緩和剤が必要か。

「沢村さんはいつも、こいつと帰ってんの?」

「私がバレー部がある日以外は…あ、でも来週からテスト期間で部活が無いんだ」

「じゃあ沢村さんも一緒に。二人とも、分かったな」

こくん、と二人が頷く。

「リノ、私今日泊まっていこうか?」

「そうしてもらえ」

うん、と璃乃が頷いた。
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