気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女3
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「田中?」
呆気に取られて、真記子が素っ頓狂な声を出す。
「だって、もうとっくに別れたじゃん」
「うん、でも時々今でもメールしてくるの」
初耳だ。
どんな事を、と聞くと
「『今何してるの、一人?』とか『氷室とは付き合ってるの?』とか…」
「それで、何て答えたの?」
「付き合ってないって…」
「マジ?!」
「うん」
真記子は少し沈黙してから、こう言う。
「あのさ、リノ。最初のメールに『付き合ってないなら俺とつきあってくれ』って書いてあったよね」
璃乃が頷いた。
「おかしいと思わない?皆はあんたと氷室君が付き合ってるって思ってるんだよ」
「あっ、そうか!!忘れてた!」
…こいつはまったく。
「氷室君にメール打って。それと着替えないとね」
璃乃がメールを打つと、氷室がすぐに家に来た。
「誰!?思い当たる奴って」
「田中君」
と璃乃が言う。
「田中…?」
「リノの元彼よ」
氷室が驚いて、目を見開く。
「お前、付き合ってた…て、マジ!?彼氏居た事あんの!?」
はっきり言って、ショックだった。
こんな変な奴が…まあ、意外とモテる事は知っていたが、付き合うとしたら自分が一番初めなのだと、信じて疑わなかった。
「一ヶ月で別れたけどね」
「違う。正確に言うと3週間」と真記子が言う。
今の驚き様と動揺ぶりで、氷室の気持ちが分かってしまったのだ。だから、出来る限り氷室の応援をしようと思った。
この氷室君を見て気付かないなんて…本当に鈍いわよね、リノは。
「1日に20回から30回位メールが来るって、あの時言ってたよね。リノが『返事が面倒臭いから無視しちゃえ〜』とか言ってたでしょ」
氷室は内心ホッとしながらこう言う。
「お前…それは続かねーわ…」
「リノは筆不精だからね〜。私でさえ、こっちからメール送んないとメールくれないし」
と真記子が笑う。
なんか話題がズレてない?
まあいいや、謝っとこう。
「スミマセン」
璃乃が頭を下げる。
沢村でも、と聞いて氷室はやっぱりそうなのか、と納得した。
それはそうと田中。どんな奴なんだろう。
「吉田、そいつの写真と住所名簿、それとタウンページ。急いで!」
「写真…撮ってない。プリクラも過去の事だしと思って、捨てちゃった」
「お前…男が泣くぞ」
真記子が
「中学の卒業アルバムがあるじゃない」
と言った。
中学が一緒だったのか…。
「あっ、そうだ!確かそれに住所も載ってたと思う」