気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女3
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卒業アルバムの田中秀弘の個人写真を見て、氷室は眉をしかめる。
「こいつ…たまに同じ電車に乗ってないか?何回か目が合ったことがある。髪形は違うけど」
「うん、だって同じ駅だもん」
「じゃあ当然住所もこの近く。じゃあ…沿線沿いに探してみるか」
「何を?」
と真記子が聞くと、
「コンビニの電話番号だよ。FAX置いてる所あるだろう?…いや、だとしたらこっちから電話したほうが早いな」
コンビニじゃなかったらどうするんだろう、と璃乃が考えている間にも氷室はもう、携帯で直接番号に電話をかけ始めている。
肝がすわってるなあ。
「はい、わくわくマート星が丘駅前店です」
「すみません、今日の6時半過ぎにそちらから、悪戯のFAXが10枚位入ったんですけど、その時間にそちらに居た方はいらっしゃいますか?」
今は10時近く。
もう居ない方の可能性が高い。
「少々お待ちください」
とややあってから
「今日はもう帰ってしまいましたね〜」
という残念な回答が帰ってきた。
「防犯用カメラに顔が写っているってことは…」
「あ〜僕バイトなんで良く分からないんですよ。本当にウチの店なんですかァ?」
氷室はこれだからバイトは…と思いつつ、
「店長さんは今、いらっしゃいますか?」
「今はいませんねえ」
「じゃあ、今日の6時半に当番だった方のお名前と、次のシフトが入っている曜日を教えて下さい」
ややあって、
「次は水曜の5時から9時まで入ってます。佐々木ですね」
「どうもありがとうございました」
電話が切れると、2人が凄ーいと拍手する。
「やっぱりコンビニだったんだ!」
リノが心なしか興奮して言った。
「明後日、現場に居た佐々木って人に会いに行くぞ。吉田、携帯、非通知電話否定設定になってるな」
彼女が頷く。
「明日、早めに出て駅で田中秀弘を待ち伏せよう。じゃあ、いつもより15分早く家の前で」
ええ〜、と早起きが苦手な璃乃が言うと
「リノリノ、あんたのためなんだってば」
と真記子が苦笑する。
「そういう事。じゃあ、明日な」
と言って氷室は帰って行った。