気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女2
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「だーーーっ、違うっっ!!」
玉葱を切っている氷室に大声で叫ぶ。
「皮むいてから切るって言ったでしょっ」
「切ってからむけばいいじゃん」
ああ…何でこうなんだか。ああ言えばこう言う。
さっきなんて、じゃが芋の芽を取ることも知らない事にあきれたばかりだ。
一人きりで料理をさせたら…と思うと、ゾッとする。
やはり私が教えてあげて、コイツが食中毒死する確率は低くなるだろう、と思われる。
真剣そのものの面持ちで玉葱に苦戦している氷室を横目に、璃乃はちらりと、そんな事を思った。
本日は、記念すべきお料理教室(?)第一回目だ。
メニューは肉じゃが、人参サラダにワカメの味噌汁、あとはご飯と納豆。
う〜ん、我ながらよくバランスの取れた栄養食だと感心しつつも、実は昨日のカレーの材料をどうにかしたくて考えただけの物だったりする。
いい嫁さんになれるなあ、イヒヒ。
「吉田さん、玉葱切れた」
ひょいと覗くと…、とっても厚切りの玉葱がまな板の上にでん、と居座っている。
たしか、私は薄切りにしろ、と言ったはずだよな…。
「ほ、本当だ…氷室君」
彼女は、そのうち氷室の料理が上手くなってくれることを悲願しつつ、苦笑いを浮かべた。
夕食を作るのが楽になる、という考えは甘かった。
むしろ、こっちの方が苦労をしているような…。
とても肉厚な玉葱の入った肉じゃがを頬張る。
「そう言えば、どうして氷室君一人暮らしなの?」
「じゃあ、なんであんたは一人暮らしな訳?」
氷室が意図的に話題をずらしたのを、感じたような気がした。
「家族が仕事の都合で転勤してんの」
「ほーっ。吉田さん、下に兄弟居る?」
「弟が一人ね」
「絶対にぶっとんだ性格してんだろ」
いぶかしげに顔を上げた彼女の顔を見て、意地悪に笑ってみせる。
氷室、やっ、やな奴ーっ!!
「何で私がぶっとんだ性格なのよっ」
怒りに震えている彼女を無視し、悠然と人参を口に運び、全部食べ終わると。
「なかなか勘がよろしい様で」
クックッと笑い、「ご馳走様」と言って食器を流しに持って行く。
く…悔しい。
相手は一枚うわてと見た。