気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女3
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「先輩、ごめんなさい」
菅野が、少し困ったように笑う。
「好きな人が居るの?」
ややあって、璃乃がしぼり出す様に言った。
「………はい」
「…それは氷室君かな?」
「………そうです」
菅野はそうか、と呟いて璃乃の肩をポンポンと叩いた。
「はっきり言ってくれて、こっちもすっきりしたよ」
帰りの電車の中で、壁に寄りかかって外を見やる。
世界は夕日で橙色に染まっていた。
菅野先輩程優しくて、誠実な人は他にも滅多に居ないだろうと思う。
いつも他人にまで気を使って…私なんかとは大違い。
私は自分のことだけで精一杯。
私も、先輩位強くなれればいいのに…。
夕焼けが、いやに眩しく目にしみた。
そろそろ夕食を作る時間なのに氷室が来ない。
仕様がない、迎えに行ってやるか。
電話をするよりそっちの方が手っ取り早いなんて、不思議な感覚だ。
ピンポーンとチャイムを鳴らすと、ダダダダダッと走る音がする。
そんなに急がなくても良いのに…とのんびり構えていると、いきなりドアが開いて見知らぬ女が抱きついてきた。
「会いたかったわっ」
だっ、誰なんだこの女は…かなりのパニック状態に陥りながらも、何とか言葉を発する。
「しっ…失礼ですがどちら様でしょうか」
女は璃乃の首に腕を回したまま、じっとこちらを見つめて、ニヤリと意地悪く微笑んだ。
「氷室明の恋人」
恋人ー!?璃乃は、頭の上から水を被さった気がした。
「だっ、涼子、お前何やってんだ!?」
「何って、感動のご対面。羨ましい?明」