気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女4
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あれ以来、嫌がらせのメールや電話、FAXは全く来なくなった。
佐々木はあんな事はしたものの深く反省し、良識もある様だった。
田中にも上手く伝えてくれたのだろう。
そんな事を考えていると。
メールが入った。
岡野かな、と思うと珍しく吉田璃乃だった。
なになに。
『数学の問題が出来ないので、今からそっちへ行きます』
ってオイ!
もう風呂に入っちまったからジャージだし、何よりも部屋。
俺の部屋は、きたねーんだよ…。
そんな事を思っている内にピンポーン、とチャイムが鳴る。
「おい」
「ハイ」
「俺の部屋は今日目茶苦茶きたねーんだ。お前の部屋にしろ」
「今はテスト前で…エヘヘ、家も汚いんだ。てかこんな所、マンションの住人に見られたら大変だよ。早く開けて」
この女は…。
仕方なくドアのチェーンを外すと。
何と吉田は…パジャマだった。
何か俺…まだ付き合ってもないのに古女房ならぬ古夫と化しているのでは…?
「着替えるの面倒臭くて…でもやっぱ着替えた方が良いよね」
回れ右をする彼女の肩を掴む。
「いやいい」
…と言うより、俺は単純に彼女のパジャマ姿が見たかっただけだったりする。
薄いオレンジのストライプに、クマの模様。
何考えてるんだ俺。
これじゃあエロジジイじゃねーか…。
「うっわーきったなー」
勝手に部屋を覗き込むと璃乃は
「失礼します」
と言ってカオスの中へ入って行った。
机の上に広げられた参考書を見て、彼女は素っ頓狂な声を上げる。
「ちょっと氷室、何で2年のあんたが数3なんてやってる訳?」
「息抜きにちょっとやってみたら結構面白くて…ってそんな事より分かんない所、早く見せろ」
信じられない、と言う様にどんぐり眼になった璃乃が、こそっと
「コイツは使える…」
と言ったのを、氷室は聞き逃さなかった。