気まぐれな彼女

□気まぐれな彼女7
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明日はついに、母と佑吾が帰ってくる。


今日は2人の最後の晩餐、というわけだ。




「最後なんだから、もっと豪華な物を食べようよ!」

と主張する璃乃。


「カレーが食べたい。しかも普通の」

とごねる明。


「又カレー?明はなんでいつもカレー食べたがんの?インド人じゃああるまいし」

とからかうつもりで言うと。








「母親がよく作ってくれたんだ…」

と言う。



それって…マザコン?

っていうか、手抜き?


まあ明の場合、仕方がないか。


「母親」。


この2文字に璃乃が折れた。



いつもはあとサラダの一品だけなのだが、チキンの黒胡椒焼き、コーンクリームスープも追加された。




「ちょっと作りすぎじゃねえか?」



「いいよ。余ったら佑吾が全部食べてくれるから」





佑吾、あいつ大食いだったのか…。










「この前の文化祭でびっくりしたんだけど明、岡野君以外にも友達いるじゃん」





「うん。…何か最近はクラスに溶け込んでる様な気がする」





璃乃は驚きつつも、素直にその事実が嬉しかった。




「おおーっ、成長したねえ。明も」



「成長って、何がだよ!」


と青筋を立てているが無視をする。




「天国で、お母さんやおばあちゃんもきっと喜んでるよ」







照れたのか、明が話題をずらす。



「ところでお前、この前は何で俺が部屋に入るの嫌がったんだ?」

と明が聞く。





「それはですね…最高に綺麗な状態の時に部屋に入って欲しかったからっすよ」



「あれで十分綺麗だと思うけど」



「いやいや、明の場合小姑の様に指で棚の隅とかほじくって『おや埃が…』とか」

「言わねーよ!!」




いつになっても何を考えているのか分からない。









しかもこいつ、分かってるのか?







今日は二人っきり最後の夜なんだぞ?





「リノ、良かったら俺の部屋来ないか?」



「え?行っても良いけど…」


「何?」






「ドラえもんが…」

俺よりドラえもんかよ!!




「…俺んちで見れば良いだろ」




2人でドラえもんを見終わった後、何と璃乃が今日レンタルしたホラー映画を観たいと言い出した。


そういえば、「三度の飯よりも漫画とホラーが好きだと自負するキヌが一番恐いと言うやつだよ!これは観なきゃ」と今日の帰りにレンタルに寄ったのだった。




「ミザリー」を2人で観たのだが、これは恐い。



かなり恐いぞ、これは。


お化け屋敷ではおばけを観察する程の璃乃だが、流石の彼女も恐怖に身を強張らせ、身体をすり寄せて来た。


時々彼女が

「ヒッ」

とか

「ギャー」

とか声を上げるので、益々恐い。


黙って観ろと言いたかったが、言っても無駄な事が分かっていたので黙っていた。



映画を観終わってから彼の部屋へ行くと璃乃が

「あれっいつもより綺麗じゃない?」

と言う。




そりゃそうだ、今夜の為に掃除したのだから。



だがそんな事など一向に気付く気配が無い。








本当はこいつ、わざとそらとぼけているんじゃないかと疑いたくなってくる。
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