緋月宮の女官〜春告げ鳥の唄〜
□第五章
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「まあ、何とご立派なお方でしょう」
「噂にたがわず、凛々しいお姿ね」
「蒼陽宮の女官達が、羨ましいこと」
口々に、そういった言葉が聞き取られる。
遠目に見える曦曄の姿は確かに、大陽創神の名に恥じない、立派な様子だった。
と同時に、その隣の朧朏もまた、今宵の美しい望月に負けない、麗しさを漂わせている。
そう、聖護大創神の二人は御帳の中から外へと姿を現したのであった。
それにしても。
「ねえ、纓珞」
「何?陶嘉」
「なんだか、先程から蒼陽宮側からの、凄まじい視線を感じるのだけれど」
「気にしちゃ駄目よ、陶嘉」
纓珞はちらり、と蒼陽宮の女官達を一瞥した。
「緋月宮の皆は貴女の味方よ。堂々としていれば良いのよ。それにしても……」
纓珞がふうっ、と溜め息をついた。
「大陽創神様って、本当に素敵なお方なのねえ。貴女が羨ましいわ、陶嘉。前代の、大陽創神様も素敵なお方だったけれど……」
「纓珞。貴女、前代の大陽創神様を御存知なの?」
陶嘉が、そう尋ねようとした、その時。
これ見よがしと聞こえてくる、蒼陽宮の女官の、若い声がした。
「まあ、あの方が?」
「全く大したことないじゃない」
「見て。すましかえっているわ。曦曄様が、自分だけの物だ、とでも思っているのではない?」
陶嘉は、度肝を抜かれて、思わずそちらを見た。