緋月宮の女官〜春告げ鳥の唄〜

□終章
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曦曄と朧朏、そして陶嘉は朱瓊と彩彬、それに杏茲を連れて幽玄宮を訪れていた。

通称、隠れの宮。

即位前、又は引退後の聖護大創神と大聖母が住まう宮である。

宮中の範囲内と言っても大分奥まった場所にあり、一介の女官などはそうそう立ち入ることの出来る場所ではなかった。


前聖護大創神と大聖母の三人は、御帳の内に収まっていた。

「朧朏の為に若い女官を緋月宮に入れたとは聞いていたが、まさかその女官が目に留まってしまうとは。曦曄、お前緋月宮の女官だから、興味を持ったのかい?」

曦曄は、はっきりと口にした。

「違いますよ。たまたまあの桜の元で出会ったのです」

「まあ、あの木の下で?素敵ね」

はしゃいだ様子の大聖母が、嬉しそうに言葉を口にする。

正確に言うと、私は木の上だったのだけれど、と陶嘉はこっそりと思った。

曦曄も同じ事を考えているのだろう、彼は吹き出しそうな表情でこちらを見つめていた。

「妾は反対であるぞ」

出た。

曦曄と朧朏は、同時に思った。

「花嫁がその娘に決まったのであれば、朧朏が譲歩すれば良いではないか。又新しく、若い女官を緋月宮へ入れれば良いだけの事」

朧朏は黙って、俯いていた。

「ですから伯母上、先程から何度も申し上げている様に、私にとっても、朧朏にとっても、陶嘉は特別な存在なのです」


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