気まぐれな彼女

□気まぐれな彼女4
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「だからここは2倍角の公式を使うだろ?で値を代入して余弦定理を使うと?」

しばらくの沈黙の後。



「あ〜、ハイ。分かりました」

「解けると面白いよな、三角関数」

数学が一番の敵である彼女にその言葉は理解に苦しんだが、とりあえず頷いておいた。

「お礼に、氷室が現国や古典で分かんない所があったら教えてあげるね」

「ハイハイ」と適当に相槌を打つ。

「先生、有難うございました。今後もよろしくお願いします!それでは」

と言うと、彼女は台風のように去っていった。

…変な奴。

あいつのパジャマ姿、結構可愛かったよな。

それにしても。いつ告白していいのか分かんねえ。

それに、断られでもしたら今の関係がブチ壊しだ。

岡野には、俺が彼女を好きで、いまだに告白出来ていない事を最近、伝えたばかりだ。


「うっそだろ〜!?じゃあお前ら、まだ付き合ってないわけ?家が隣で夕飯まで一緒に食ってるくせに?」

「恋愛はタイミングだって言うよな。波が来た時に乗っちまえば良いんだ」

「っていうかお前もしかして恋愛うとくね?」

と彼は散々言ってくれたが。

タイミング?

波?


恋愛は勉強より難しいよな、実際。

氷室は、深くため息をついたのだった。










お昼休み。

購買で苺ミルクを飲んでいる真記子が

「ねえねえ。氷室君、この前のテスト総合3位だってよ。この前来たばっかりなのに」

と言った。

「本当!?」

璃乃と絹子が同時に叫ぶ。

「リノ、聞いてなかったの?」

美穂が突っ込みを入れる。

「うん」

何か、ショック。

そんなに勉強が出来るとは思わなかった。

って言うか、お隣同士のよしみでそん位教えてくれても良いじゃない。


「医学部入るって噂だよ」

と真記子が口にする。

氷室、どうしてそういう事を話してくれないの。

…私は、その程度の存在なの?



璃乃の様子に気付いた真記子がフォローする様に言った。

「同じクラスだからさ、噂が伝わるのが早いのよ。きっとこういう事だから、氷室君も言いにくいんじゃない?自慢しそうなタイプじゃないし」



それでも…何か気に食わない。

一人、ぶーたれる璃乃だった。
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