気まぐれな彼女
□気まぐれな彼女5
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昼休みになり、璃乃の所へ行こうとしていると、クラスメイトが自分を呼んだ。
「氷室ー!この子が用があるんだって」
「………?」
今までに見た事も…いや、見た事がある。勝気そうな目元に、整った鼻、リップグロスでつやつやとした唇。
栗色の髪は璃乃程には長くないが、ゆるくウェーブがかかっており、表情に華美さを添えていた。
岡野が
「おい、あの子って、1年で1番の美女だって言われてるエリナって子じゃないか?」
と言った。
「何か用」
「ちょっといいですか?ここじゃ出来ない話なんで」
というと花の様にニッコリと笑った。
…告白かな?
嫌だな、璃乃が居るのに。
屋上に出ると、人は誰も居なかった。
「私、西田恵里奈って言います。私、氷室先輩が好きなんです」
「俺、付き合ってる奴がいるから」
と言うと
「良いんですか?」
と言う。
「何が?」
「氷室先輩と吉田先輩が同棲してるって噂流したの、私なんです」
何の罪のてらいも無いように、そう言った。
「はあ?」
「お2人の事は大体調べさせてもらいました。お隣さんなんだそうですね。実は私、近くの一戸建てに住んでいるんです」
だから見た事があったのか…と納得している場合ではない。
「私、吉田先輩よりも氷室先輩とお似合いになる自信があります。成績だって良い方だし、吉田先輩よりも背が高いし、胸だって…」
「ちょ、ちょっと待て!俺は吉田璃乃以外の奴と付き合うつもりは全然無い!」
「吉田先輩が毎日、氷室先輩の家に寝泊まりしてるって噂、流されても良いんですか?」
はあ?
何、この女。
明は、久し振りに自分の中で何かがぶち切れる音を聞いた様な気がした。
「お前がそういう事してんじゃねーの?最悪だな、お前」
ポケットに手を突っ込んだまま、一度も振り返らずに屋上を後にした。
一人残された西田恵里奈は…ガンッと思い切り屋上の鉄格子を蹴り飛ばした。
「このままじゃ終わらせないんだから…」
ギリッと鮮やかな唇を噛んだのだった。