ノブナガ
□寝覚月
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「……俺が悪ぃみてえじゃん……が……で、ヒソカの野郎が……」
「何ブツブツ言ってるの?」
ついさっき、団長が盗ってきた新しい能力で、今後の行動方針を占ってもらった。
占いの結果には、借宿を離れればクモの半数がいなくなるとあった。
ということは、ここでじっとしていればそれは回避できる。
だけど、どうしても納得がいかない団員がここに一名いた。
「俺からすりゃ仲間をほっとけるかって話だよ。仲間見殺しにしてクモの存続だ?ふざけろって」
場所は変わって、今はノブナガと土砂降りの中を二本の傘を差して歩いていた。
ちょうどタバコが終わって、イライラを治める方法がないノブナガに、私はコンビニまで一緒について行ってあげることにした。
最初は露骨に嫌そうな顔をされたけど、なぜか一人にさせられなかった。
旅団の中でも、ウボォーとノブナガの付き合いは長く、その仲間意識はとてつもなく深い。
大事な相棒の危機にまったく身動きが取れない状況で、ノブナガ自身もすごく辛いはずだ。
でも団長とその意志には逆らえない。
男だったらこんな時一人でいたいのかも知れない。それでも私は、こうして彼の隣にいたいと思ったのだ。
コンビニまでは15分くらいだ。
これから来週の行動のために班を決めなくちゃいけない。
タバコを買ったらすぐに戻ろう。
にしてもこのオッサン、さっきはクロロに散々ここに残る理由を説明されて「何か言うことはあるか」と圧力をかけられ、力無く「ねェよ……」と言ったばっかりだ。
「もう団長に逆らう気はねえよ。ただイライラすんだよっ……!“死ぬのも仕事に含まれる”だ?んなこた分ーってるよ。だからって死んでもいいってわけじゃねえ!」
「……それ本人の前で言えば良かったじゃん」
ノブナガより少し後ろを歩いている私は言った。
不満を漏らすノブナガの後ろ姿を見ていると、その先に見える雨が相変わらず強いのだと知った。