クモたち+α
□指先の光
1ページ/2ページ
猫がブロック塀の上を歩いているのが部屋の中から見えた。名無しさんもそれに気づいていて猫を指差し言った。
「あれ、殺してみてよ」
名無しさんの目は本気だ。一般人には中々見られない殺気づいた状態で、俺を見る。
「いやだよ」
断る俺を相変わらずの勢いで睨む名無しさんに、俺は僅かに目を伏せ微笑んだ。
猫はちょうど俺たちの目の前で止まり、その小さな手で顔を擦っていた。無邪気なところがさっきまでの名無しさんのように可愛らしい。
「できるでしょ?早く殺して見せて」
「いやだ」
「じゃあ、あの電柱にいる鳥は?」
「……やだってば…」
少しの間が空き、俺は名無しさんを落ち着かせようとして肩に触れるしぐさを見せれば、伸ばされた手はあっさりと払われた。