ノブナガ

□昼下がりの太陽
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春と夏の境目なのに、こんなに天気がいい日は久しぶりだ。
昨日の天気予報でも明日は快晴、なんて言ってたし早起きでもして外に出るつもりだった。

ところが私は人一倍眠気に弱い。今日はいつもより早く起きようと思ったのに、慣れない時間にアラームがなったせいでそれを止め再び寝てしまった。おかげで布団から出たのは時計の針が2本とも天辺に来たときだった。

天気予報どおり今日は快晴だった。カーテン越しでも天気の良さが分かる。

自分に少しの情けなさを覚えながら、まだ温かい布団をベランダに干す。外の空気は新鮮で、体全体がその空気を吸い込んでいくようだった。青と白のコントラストがあまりも綺麗で、はっきりと目が覚めるのを感じた。

息を大きく吐き出してから部屋の中に戻り、今日一日の予定を考える。網戸から入ってくる僅かな風は肌に気持ちよく、私の頭を活性化させた。


「あ、ノブナガ……」

考えたのが先か言ったのが先か。そういえばノブナガは今何をやっているんだろうなんて思う。天気が良いから一緒にお散歩でもしてみたいななんて、面倒くさがりな彼は嫌がるだろうか。

「あぁなんか、キスしたいなぁ」

そう思ったのは本当に素直な気持ちだった。まだ半分はやっぱりポケーッとした私は本当に目が覚めたのか疑問になってしまうが、心地良い今の状況を、ノブナガと一緒に過ごしたいと思った。

噂をすればなんとやら、携帯が鳴った。

「以心伝心かな?……」

根拠のない期待を胸にディスプレイを見るとノブナガで、ノブナガも私と散歩したいのだろうかと少し胸が躍った。

私はすぐに通話ボタンを押した。

「はーい」

『よぉ、俺だ』

「やぁ。どうしたの?」

『いやな、天気いいし、お前をかまってやろうかななんて思ってよ』

機嫌の良さそうなノブナガの声になんだか心が落ち着く。でもいま機嫌が一番良いのはきっと私なんだと思う。

「ほんとは自分が会いたいんでしょ」

『まぁそんなとこだな』

「めずらしく素直だね。ってか私もノブナガに会いたかったの」

『お前もめずらしく素直じゃねえか』

ノブナガもきっとこの天気の良さにやれたんだな。なんだかノブナガと繋がってる気がして嬉しかった。

ノブナガが私の家の玄関まで来ていたのを知ったのはその後すぐで、私はジャージのズボンにTシャツ姿のまま彼を迎えることになった。


「いらっしゃい」

「よぉ。じゃまするぜぇ」

片手を上げながら部屋に入ってくるノブナガの目に最初に入ったのは、窓ガラスを通しての空だった。嫌でも目に入ってくる青空には強制的に心和やかにされてしまうのだろう。

「すっげぇ晴れてんな」

「ね。やっぱり晴れてるといいね、それだけで楽しいもん」

「俺がいたらさらに楽しいしな」


「……ほんとに機嫌がいいんだね」

めったに言わないセリフに思わず可愛いと思ってしまう自分がいた。ノブナガに『可愛い』なんて似合わないけど。第一、年が年だし顔も顔だからな。一人でクスっと笑っているとノブナガの残念そうな声が聞こえた。


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