クモたち+α

□非力な腕
1ページ/2ページ

「ノブナガは欲しいものをくれるから」


名無しさんは俺にそう言った。

俺はずっと名無しさんが好きだった。ノブナガと付き合ってるなんて前から知ってたよ。

だけど、この気持ちは伝えたかったんだ。


でも実際俺の口から出た言葉は「好き」とか「愛してる」なんかじゃなかった。


『どうしてノブナガなの?』


俺が聞くと名無しさんはあっさり答えた。ノブナガは欲しいものをくれる、と。


それなら俺が与えるから。
名無しさんが欲しいもの、何でも与えるから――。


「何でも与えるから」

「ごめん…。ノブナガじゃなきゃ、ダメなんだ」

「…俺が与えるから」

「ノブナガが、いいの…」

穏やかな口調はノブナガとの愛の深さを表していた。

落ち着いた名無しさんの声が、悔しい。


どうして俺じゃないんだと何度も頭の中で言った。

もし名無しさんが俺の方を向いてくれたらと、確率の低い考えばかりが始まっていく。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ