クモたち+α

□捜索願い
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「ねえ、フランクリン」

「あん?」

「ウボォー、帰ってくるのかな」

「さあ? そのうち帰ってくんだろ」

ウボォーが鎖野郎と戦いに行ったきり、帰って来ない。何となく嫌な予感はしていた。不安はだんだんと大きくなってウボォーが行った5時間後の今、私の不安は膨張していくだけだった。
陰獣と戦っていた時は全然心配なんてしていなかった。喧嘩好きなウボォーらしさすら感じていてみんなでトランプなんてしていたのに。

それまでは平常心を壊さないようにしていたはずだったのに、背中や手の平から冷や汗が出ている。両腕は今にも震えそうで、私は下唇を噛んだ。

「おい」

「……な、に」

隣に座っていたフランクリンがこちらを向いたのが分かった。だけどそれに上手く返事をすることができない。

「そのうち帰ってくるって言ってんだろ」

いつもと同じ、まったく同じ低くて安定した声でも、どこか不安が混ざっているような気がした。それでもそう言ってもらえることで一度息をゆっくり吐くことが出来た。

「分かってる……。けどさ、なんか、」

言いかけて、ついに腕が震え始めた。私はたまらず両手を力強く組むが効果はない。
“怖い”。今まで感じたこともない恐怖が私を襲う。例え自分が死ぬ寸前であっても恐怖なんて感じたことがなかった。死は日常だというのに、どうしてこんなものを感じなければいけない。

「信じて待て」

フランクリンの大きな手が、ふわりと私の頭に乗る。
止まりそうだった息は一気に外で出ると同時に、涙も一緒に出た。

まったく失礼な話だ。ただウボォーはまだ帰ってきていないだけの話なのに。これじゃあまるでウボォーがもう死んでいるみたいだ。止めよう、こんな根拠もない心配をするのは。

「うっ……」

「……」

「……んっ……」

口を閉じたままグッと涙をこらえる。勝手に溢れて流れていく涙なんか知らない。どうしてこうも涙は自分勝手なのか。

フランクリンは黙ったまま私の頭を撫でたり、ぽんぽんと叩いてくれる。それがどうにも混乱した私の心を落ち着かせてくれた。

しばらく泣き続けて思ったことがある。
それは、今こうして私の頭の上にある優しい手すらなくなったら、ということだ。
私は隣をちらりと見て言った。

「……フランクリンは……いなくならないでね……」

「はは。俺か? 当たり前だろ」

長くなった耳たぶが揺れた。私もそれにならって口角を上げる。綺麗に笑えないことは、気にしない。

こうして私はフランクリンと共にウボォーの帰りを待っていた。大切な仲間の帰りを。



何年も前から書きたかったフランクリンの夢がようやく書けました。書き下ろしです。
他の団員の夢も、どんどん増やしていきたいと思います。


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