ノブナガ
□愛して止まない。
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空が晴れていた。
ふと思い出すのはいなくなったお前のこと。どこに行くのにも一緒だったのにな、こうして空だって一緒に見たのに。
忘れようとしてたのに、生きている限りどこにいたってお前を思い出しちまうんだろう。
青い青い空はその事実を残酷に俺につきつける。こんな狭い窓、いっそのことなくしちまえばいい。
「はぁ……」
窓の外を見ていた目を伏せながら体を反転させ空に背中を向けると、座っていた椅子の背もたれが胸のあたりに来る。そこに顎を置き背もたれを抱きしめるようにすると、木製のいい匂いが鼻を擽った。
お前の匂いがなくても、今はこいつの匂いで我慢できるだろうか。そんな問いかけを内心でしても、返事はしない。できない。
「ノブナガー! 今日は大丈夫!?」
「……大丈夫じゃねぇよ」
ノックと同時に元気のいい足取りで入ってきた名無しさんが癪にさわる。誰のせいでこんなことになったと思ってんだよ。
「一週間禁煙してるだけで何言ってんの! まさか吸ってないよね? タバコ」
「吸ってねぇよ。てめぇが怒るだろうが」
「よしよし、いい子ですね」
「っせぇ!」
ニタニタしながら俺の頭を撫でてくる名無しさん。こいつが俺のタバコを取り上げたせいで禁煙二日目から今までずっとこんな感じなんだ。
明日には禁断症状とか出て手が震えたりするに違いない。
「椅子なんか抱いちゃって。そんなに寂しかった?」
「ああ。タバコ吸えなかったのがな」
「ひどっ。あたしに会えなかったのは寂しくないの!?」
「おととい会っただろうが」
ほっぺたを膨らます名無しさんは腰に手を当て、眉を寄せて俺を見る。怒りたいのはこっちだぜまったく。タバコ吸わねぇと、どうもイライラして仕方がない。
もう一週間我慢したんだし、そろそろ……。