クモたち+α
□君に恋した日曜日
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「紹介する。名無しさんだ」
そういって団長が連れて来たのは、見た目が二十歳前後の女の子。盗賊集団にはまったく似合わない子だ。
「初めまして、名無しさんです。よろしくお願いします」
ニコっと笑うと、大げさかもしれないけど、まるで花が咲いたようだった。シズクをもっと明るくしたみたいな感じ。
「なんだ〜団長? こんな可愛い子連れて来て。ちゃんと仕事できんの〜?」
ノブナガが髭を触りながら名無しさんちゃんを眺める。名無しさんちゃんは特に変わった様子もなく立っていた。
「ノブナガ、名無しさんは強化系だ。もしかしたら腕相撲はお前といい勝負かもしれないぞ」
「はっ! んなわけねえだろ」
この子、こんなに細いのに強化系なんだ。強化系ってゆうとどこか自己主張が強かったりするんだけど、この子はそうでもなさそう。
俺はその後、団長に仮宿や周囲の案内、旅団のことについて詳しく説明するように頼まれ、仮宿内を名無しさんちゃんと歩っていた。
「この階は女の子たちが使ってるんだ。一応電気と水は通ってるから、ここを部屋代わりにしてる」
女の子の部屋にしちゃかなり素っ気ないよね、俺がそういうと名無しさんちゃんはクスっと笑って頷いた。うん、すごく女らしい子だ。打ち解けやすいし、仕事もしやすいだろう。
「名無しさんちゃんの部屋はここ。パクノダの隣。パクっていうのは背が高くてスーツ来てた人ね」
仮宿の案内を一通りすると、外へと出た。ちょうどお昼だということもあり、俺達はレストランへ向かった。
「あれ、なんか混んでるなあ」
レストランに入ると、席が少ししか空いていない。
「今日は日曜日だからじゃないですか?」
「あ」
そうか。
俺は一人で納得する。全然曜日の感覚なんてなかったから、分からなかった。最近はずっと仕事の下調べで部屋にこもってたし、尚更だ。
店員に席を案内され、席に着く。名無しさんちゃんはさっそくメニューを見て料理を選び始める。
「ん〜、何がいいかなあ……。パスタもいいけどカレーも……」
やっぱり女の子なんだな。俺はちょっとデートしてる気分になった。あんまり女の子と二人でこういう風に食事したことないし、何だか名無しさんちゃんといると落ち着く。今日会ったばかりなのに、懐かしいような、そんな感じがした。