ノブナガ
□寝覚月
3ページ/5ページ
「こんの……くそヒゲ野郎!!!」
持っていた傘を一瞬でたたみ、思い切り念を込めてノブナガの背中に向かってフルスイングした。
風がブワッと起こり、辺りに雨水が弾け飛ぶ。
「ぬわっ!?……てめっ、何っ――!」
「なんでそんな事言うの!?ノブナガのバカ!」
何度もノブナガに向かって傘を振り下ろす。風と雨が混ざり、お互いびしょ濡れだけ。
「やめろっ!くっ……」
「自分だけが悔しいと思わないでよっ!みんなも、私も!悔しいんだよ、ウボォーのところに行ってやりたいんだよっ!」
初めは、雨で視界が悪いのかと思った。
だけどこれは雨なんかじゃない。
気がつくと私は泣いていた。
「みんなが心配してないみたいに言うな!!バカっ!!」
「わ、分ーったよ、分かったからやめろって……!」
ノブナガも必死で自分のたたんだ傘でガードする。
お互い強化系のせいか、ぶつかり合いが凄まじくて周りの土や建物が吹っ飛んでいた。
「……悔しいのは、辛いのは、ノブナガだけじゃないんだよ…………」
一通り泣き叫んで傘を振り回した後、私は小さく言った。
雨がひどいせいで、自分の声もろくに聞き取ることが出来なかった。
何だか一気に疲れてしまった。
ここまでやって、やっと分かった。
私自身もすごく辛かったのだ。
自分の気持ちを上手く整理することができず、ノブナガのフォローもしようなんて私にはそんな器量はなかったのだ。