今吉×青峰
□俺とお前の距離
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「つか、あんたが言うと何でも胡散臭ぇんだけど。何か企んでるだろ」
「ははっ、ひどい後輩やなあ。俺の本心やで?」
「はいはい。もう用がねえならどっか行ってくれよ。練習来たらっつって誰かと喋る気分なわけじゃねぇんだよ」
「そうなん?てっきりみんなに馴染もうと頑張って来てくれたんと思っとったのに」
「顔も言葉も胡散臭ぇな、ほんと」
「うわー、傷つくわー」
「全然傷いてる感じじゃねえから」
でも何でだろう、こいつは言えば多少は分かるし、無理に俺の中に踏み込んで来ようとはしない。
ダメだと思ったらすぐに引いて、こうやって誤魔化す。
少しだけ、一ミリくらい、ちょうど良い距離感だと思った。
「ちなみに、俺のどの辺が胡散臭いん?」
ったく。さっきから同じ表情でヘラヘラと。
「全部だよ全部。ぜってぇー言葉と腹ん中違うだろ」
「何でそう思うん?俺、ウソついたことなんて生まれて一度もあらへんよ」
「そういうとこだよ、バーカ」
「ちょっ、キャプテンにバカはないやろ?」
「はいはい。もう休憩終わるっすよ」
「あ、ほんまや。ああ、ちょお待ちーな青峰」
俺は立ち上がると眼鏡の横を通り過ぎた。
やつは「待て」といいながらも全然慌てる気がない。
俺はふと、こいつがキャプテンで良かったと思った。
しつこいやつだったら、かなわねえ。
たまにはこんな休憩時間も悪くない。
そう思って俺は後半の練習に参加した。
今日は、いつもより少しだけ、体が軽かった。