クモたち+α

□万年平社員
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名無しさんが溶けたアイスキャンディーを2本持ってきたのは、それから数十分後のことだった。

両手に握られたアイスキャンディーを息を切らして眺めるユミは相当遠くまで行ってきたのだろう、髪も僅かに乱れていた。

「はい……、シャル。これ……」

そうして手渡された2/3ほど溶けてしまっているアイスキャンディー。溶けたアイスが木の棒についていてベタベタしている。

「俺にくれるの?……あ、ありがとう。でも溶けて…」

「遠くまで行かないと、おいしいアイス屋さんないの。ごめんね?」

「俺のためにわざわざ買って来てくれたんだ…」

「ううん。ついで」

危うくアイスキャンディーを落としそうになり、だんだんとシャルナークの顔は疲労の色へと変わっていく。

無言で溶けたアイスキャンディーに口をつければまだひんやりとしていた。しかし、決してその甘さを感じることはなかった。

食べきった後は一人で部屋へと戻る。そこにはソファーに座り「『団長』になったらすべてが上手くいくのかな」と呟くシャルナークの姿があった。

彼が出て行った後の広間で「シャルは未来の旦那様だから出世して欲しいの!」と無邪気に名無しさんが言ったのを、シャルナークは知らない。


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