クモたち+α
□非力な腕
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「ノブナガは欲しいものをくれるから」
名無しさんは俺にそう言った。
俺はずっと名無しさんが好きだった。ノブナガと付き合ってるなんて前から知ってたよ。
だけど、この気持ちは伝えたかったんだ。
でも実際俺の口から出た言葉は「好き」とか「愛してる」なんかじゃなかった。
『どうしてノブナガなの?』
俺が聞くと名無しさんはあっさり答えた。ノブナガは欲しいものをくれる、と。
それなら俺が与えるから。
名無しさんが欲しいもの、何でも与えるから――。
「何でも与えるから」
「ごめん…。ノブナガじゃなきゃ、ダメなんだ」
「…俺が与えるから」
「ノブナガが、いいの…」
穏やかな口調はノブナガとの愛の深さを表していた。
落ち着いた名無しさんの声が、悔しい。
どうして俺じゃないんだと何度も頭の中で言った。
もし名無しさんが俺の方を向いてくれたらと、確率の低い考えばかりが始まっていく。