クモたち+α
□君に恋した日曜日
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「シャルナークさんは何にするんですか?」
「……え、俺? 俺は……」
慌てて視線を名無しさんちゃんからメニューに移す。いけない、自分の世界に入っちゃった。
「あ、その前に。俺のことシャルでいいよ。俺も名無しさんって呼ぶし。あと敬語なしね」
「分かりました。あ、分かった」
名無しさんがへへっと笑った。
「俺はスパゲティかな」
「私も。……それとカレーとチャーハンといちごパフェ」
「え、ちょっ、ちょっと待って。そんなに食べるの?」
「ん? そんなにって……多いかなあ」
名無しさんが首をかしげる。成長期の男の子だってそんな食べないぞ。
「さすが強化系だね。ウボォーの女版って感じ」
ウボォーってデカくてうるさいやつね、そう加えると「確かにあの人食べそう!」と楽しそうに言った。
それから運ばれて来た料理を名無しさんはすべて完食し、俺は頼んだスパゲティを食べた。食べてる時は終始周りの目があったけど、名無しさんは気にする訳もなく食べ続けていた。
「美味しかったね〜」
レストランを出ると、名無しさんはお腹いっぱい食べたせいか、顔を緩ませ幸せそうだった。 そんな顔されたらこっちまで幸せになる、そんな顔だ。
「美味しかったけどね。俺たちのテーブルだけ大食い選手権やってるみたいだったよ」
「あ、すみません……」
特に深い意味で言ったわけじゃなかったのに、名無しさんはいきなりしゅんとなってしまった。さっきまでの笑顔が薄くなる。
「いや、別にいんだけどね。むしろ名無しさんが食べる姿見て元気もらったし」
本当にそうだったから、俺は落ち込んでしまった名無しさんに言った。
「そ、そう……?」
良く表情が変わる子だと思った。ほら、もうニコニコしてる。
「名無しさんってさ、本当に強化系?」
「え?」
「操作系か具現化系な感じがする」
「あー、良く言われる。なんかそうみたいね」
団長にも初め疑われたよ、そんなことを話ながら二人で仮宿に戻った。
そして仮宿に戻る頃には、俺は完全に名無しさんのことが好きになっていた。自分でも不思議なくらいドキドキする。一目惚れなんて、そう思うも惚れてしまったものは仕方ない。
さて、これからどうアプローチしていこうか。