クモたち+α

□陰に溶ける
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しばらくして、二人は高層ビルの中に吸い込まれるようにして入っていく。そこは中に入れば入るほど警備は厳しくなっていき、二人が辿り着いた先は冷たい地下だった。梟の足音だけが良く響いた。

警備員に扉を開けてもらい、中からは少し明るい光と暖かい空気が待っていた。

「よお」

「わー、みんなー!」

梟と名無しさんが挨拶をする。名無しさんは梟の腕の中から飛び降りると、紅色の大きなソファーに座っている仲間に声をかけた。

「よお、やっぱりお前は梟の肩に乗ってきたな」

病犬が、予想通りといった顔で名無しさんを見る。名無しさんは病犬の隣に腰を下ろす。

「えー何で分かったのー?」

「名無しさんはいつものんびりしてるから、梟が連れてきた方が早いんだな、うん」

正面に座っている豪猪が独特の喋り方で言った。豪猪の横に座った梟が「大当たり」と頷く。

「はは、みんな私のこと良く分かってるね」

部屋の中には、名無しさんや一部の陰獣たちとその他の念能力者が集まっていた。前方にはマフィアの幹部たちが顔を揃えており、常に気を張っているマフィアの幹部たちとは明らかに名無しさんたちの雰囲気は違っていた。

「それより梟、こいつを甘やかしすぎじゃねえか?」

「?」

自分の隣でニコニコ笑う名無しさんをちらりと見ながら病犬が言う。梟は首を傾げた。

「何か会うたびこいつの自由度が増してるっつーか、現によ、」

そういって視線は名無しさんの足に行った。
名無しさんはミニスカートにブーツを履いており、上着のポケットからは棒の付いたキャンディーが飛び出していた。

「今日は当日じゃねえからいいものの、スカートとか、飴なんか持ってたら動きづれえだろ」

「ん?そうかな?」

「俺みたいにジャージなら動きやすいんだな、うんうん」

「何より、打ち合わせ開くたびに菓子出さないと幹部とか進行に文句言うだろ?おかげで俺らがそんなもん好きな奴だと思われてるんだぜ?」

病犬が呆れたようにため息を吐く。豪猪も蛭も同意見のようで、梟は瞬きを一回すると体を乗り出した。

「自由が一番だよ。それに、お前らが人に干渉するなんて珍しいこともあるもんだな」

「そりゃあ干渉したくもなるさ。わざと怪我して俺の体内のヒルで治療したがるし。変わったやつだよ」

喉を鳴らして蛭は笑って目を細めた。体内のヒルたちがぞわぞわと動く。

「ヒルが肌をぐじゅぐじゅしてる感じがたまらないんだよね〜」

あははと名無しさんが無邪気に口を大きく開けて笑うと、病犬と豪猪は呆れていた。

それから名無しさんと陰獣たちはしばらく話をしており、打ち合わせの開始時間の直前にどこからともなく現れた蚯蚓から「今日の進行役が来るぜ」と伝えられると、仕事の前情報を把握した。



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